▲スタジオやライブでの実践的な録音技術を学びます
職業としての音楽/エンタメ業界2022/レコーディングにまつわる仕事
音楽やエンターテインメントに関する職業や業界は多岐に渡りますが、一体どんな世界なのでしょうか。今回はレコーディングにまつわる仕事について、専門学校名古屋ビジュアルアーツ/学校長の清水先生に伺いました。(DiGiRECO.JR VOL.47〜2022年2月号〜掲載)
音楽を「作品」にする面白い仕事です
ー レコーディングにまつわる仕事全般について教えてください
清水:「レコーディング」という文字の通り、基本的には録音…音を収録する仕事になります。軽音楽部の皆さんにとっては音楽のレコーディングはピンと来ると思いますが、実際には音楽だけに留まらず、ナレーションや効果音を録音したり、山の中で鳥の囀(さえず)りや汽車の走る音を録るなど、その種類は多岐に渡ります。また、レコーディング・スタジオで作業をしたり、パソコンを駆使して、音楽をクリエイティブに制作していく…という一般的なレコーディングの手法がある一方で、例えば、ジャズやクラシック音楽というのは特定の楽器やパートにエフェクトをかけたり、音声処理をするのではなく、ありのままのもの…いわゆる「良い音」と言われる状態でレコーディングをする仕事もあるなど、その種類やシーンは様々です。
さらに、最近では「MA(Multi Audio)」という言葉が台頭しており、いわゆる映像に音を付ける仕事もあります。ですので、単なる録音から広く聞かせることができるまでの状態にする「レコーディング」の仕事と、その一環として、映像に音を付けて、作品を表現する「MA」の仕事の2つに分けることができます。
現代はパソコンが飛躍的に発達したおかげで、録音方法に関しては、ほぼ100%がパソコンで処理をし、録音しています。聴く側のメディアもスマートフォンやパソコンが中心になるなど、メディアの状況が大きく変革を遂げました。昔のように「レコーディング・スタジオに就職して…」というケースもありますが、何でもパソコンを介してできるほか、それこそ東京一極集中ではなく、様々な地域や場所でクオリティーの高いレコーディングの仕事ができるようになった…というのも現代を象徴する事柄の1つだと思います。
ー 入学前に、ある程度の知識は必要ですか? 高校時代にやっておいた方が良いことも教えてください
清水:例えば、「楽器を何かやっておくと有利」とか「音楽を知っていると良いよね」というのはゼロではありませんが、レコーディングは裏方の仕事ですので、音楽全般に対して強い興味を持っている人であれば、基本的には、どんな人でも大丈夫です。レコーディング機材やソフトウェアを操作したり、パソコンの前に30分以上座って作業をするのが難しくなければ、特に心配する必要はありません。強いて言うのであれば、「譜面が読めたり、絶対音感があると良いよね…」というのはありますが、ない人もたくさんいますので、これらは絶対ではありません。
また、高校時代にやっておいた方が良いこととしては、機材やレコーディング機器に早くから触れておく…というのがあるかもしれませんが、あまりそこは重要ではありません。それよりも、たくさんの音楽を聴くことが大切です。やはりハードよりもソフトの方が絶対に重要で、自分の音楽的な引き出しがどこまであるか…というのが問われる業界でもあるので、温故知新も含めて、様々なジャンルの音楽を聴いて欲しいと思います。仕事として取り組むことになるので、自分の好きな音楽だけを聴いておくのではなく、いろいろなジャンルの音楽を多岐に渡って聴いてもらい、まさに「音楽漬け」になってもらうのが一番大切ではないでしょうか。
ー この仕事の楽しいところを教えてください
清水:自分が手がけたり、関わったりした作品によって、たくさんの人たちが喜んでくれる姿を目にすることができるのが、この仕事の楽しいところです。また、直接的にアーティストの方々と作品を作っていく…やはり人と人が関わる仕事なので、同じ目標やベクトルで取り組み、一緒になって作業を行うことになります。大変に感じる時もありますが、その中でも楽曲が出来上がって、作品として完成し、ファンがそれを聴いて喜ぶ。アーティストとも信頼関係が強固になるなど、これらが職業として成り立ち、収入も得られる…というのは、この上なく面白い世界だと思います。
ー この仕事の大変なところを教えてください
清水:今の時代は、そうではありませんが、一昔前は1日の労働時間がとても長かったり、深夜まで作業が続いたり…というのがありましたが、近年はディレクターの担当者もどんどん若くなってきており、レコーディングの機材やソフトウェアも便利で、使いやすくなっています。「では、8時間以内に確実に終わるの?」と言われると、決してそういう世界ではなく、土曜日や日曜日も関係がなく、平日に休みを取るような仕事なので、そこが大変と言えば、大変な部分かもしれません。
ー この仕事は、どんな人にオススメですか?
清水:こういった質問は、どの仕事でも聞かれることがありますが、私は学校でも「向き/不向きよりも前向き!」ということをずっと話しています。気持ちが前向きで、その世界で仕事をしたり、携わりたい!というのであれば、誰でもできると思うんです。反対にオススメできないのは、冒頭にお話しした通り、誰かと密にコミュニケーションを取るのが得意ではなかったり、1人で黙々と続けるような仕事がしたい人には難しいかもしれません。レコーディングの仕事は人と人が必ず介在する世界ですので、サービス業としての人との関わり合いが大切です。