レポート

音楽/エンタメ業界の仕事

光の演出で多くの観客に感動を届けます(照明の仕事)

▲照明機材の基礎実習

職業としての音楽/エンタメ業界2022/照明にまつわる仕事

音楽やエンターテインメントに関する職業や業界は多岐に渡りますが、一体どんな世界なのでしょうか。今回は照明にまつわる仕事について、日本工学院専門学校/コンサート・イベント科の島立先生に伺いました。(DiGiRECO.JR VOL.47〜2022年2月号〜掲載)

光の演出で多くの観客に感動を届けます

ー 照明にまつわる仕事全般について教えてください

島立:コンサート照明の仕事は大きく3つの過程に分類することができます。

まずは「事前準備」です。コンサートに使用する照明機材の選定や照明を仕込むための図面の作成から取りかかります。本番のセットリスト(曲順)が決まると、曲を事前に聴き込み、大まかな照明のデザインを決めていきます。

次は「本番までの作業」です。準備した図面を基に照明機材を会場へ持ち込み、仕込み作業を行います。明かりの調整やリハーサルを入念に行い、照明の演出を完成させた後に、いよいよ本番を迎えます。

本番終了後は「撤収作業」となります。コンサート終了後に使用した機材を撤収します。このように準備、本番、撤収を繰り返し、コンサートの照明スタッフとして仕事を進めていきます。

ー 入学前に、ある程度の知識は必要ですか? 高校時代にやっておいた方が良いことも教えてください

島立:中学校、もしくは高等学校で学ぶ電気の知識を復習しておくと良いです。照明の仕事は電気を扱う仕事ですので、電気計算などの基礎知識が必須です。本校でも電気に関連する授業は改めて実施しますが、オームの法則や電力、電圧、電流などがどのようなものであるのか、事前の理解を深めておくことをオススメします。

また、学校の勉強ではありませんが、好きなアーティストやパフォーマーのコンサートやライブなどの映像(DVDやYouTube)をよく鑑賞し、印象に残った場面や「かっこ良い!」「感動した!」といった演出を書き留めてみることも良いですね。その際のアドバイスとして、印象に残った場面では、演者はどのように見えていたのか、ステージは照明で何色に染まっていたのかといったことを意識し、鑑賞してみてください。あとは今まで触れてこなかった音楽のジャンルを聴いてみたり、参加したことのないイベントやライブの動画を視聴し、コンサート業界への視野を広げておくことも有効です。

ー この仕事の楽しいところを教えてください

島立:アーティストにはコンサートやライブを通して、観客に届けたい気持ちやメッセージがあります。光の演出で、そのお手伝いができることはコンサート照明という仕事の魅力の1つです。アーティストのパフォーマンスと自身がデザインした照明演出が合致し、多くの観客へ感動を届けることができた時は他の仕事にはないようなやりがいや達成感を得ることができると思います。さらに、自分の中のイメージや発想を自由に表現できることも、この仕事の魅力です。

ー この仕事の大変なところを教えてください

島立:「光の演出を通して、アーティストのメッセージなどを届けることが楽しい」と述べましたが、実は照明演出を考えることはとても難しく、大変な作業でもあります。自分自身が良いと思った照明演出でも、アーティストが伝えたいものがうまく表現できないことや観客に違和感を与えてしまう場合は演出を考え直さなければなりません。細部までこだわりを持って、適切な演出を考える必要があります。

また、コンサート照明は基本的に機材の仕込み作業が伴います。ライブハウスや劇場など、照明機材があらかじめ仕込まれている会場もありますが、アリーナやドーム、スタジアムなどのコンサート以外にも用途がある会場の場合はステージも含めて、すべてを仮設するため、より多くの機材を仕込む必要があります。演出によっては重量のある機材を扱うこともあるので、体力もある程度は必要です。

ー この仕事は、どんな人にオススメですか?

島立:光の演出によってコンサートを彩る仕事なので、デザインに興味のある人やクリエイティブなことが好きな人に向いていると思います。また、昨今の照明演出はPCを用いて作業を進めることも多いので、趣味などでPCを使用することが多い人にもオススメです。また、「自分の中のイメージや発想を自由に表現してみたい!」「中学校や高等学校の文化祭や音楽祭などの行事が好き!」といった人にもオススメしています。

ー この仕事を続けるのに大切なことは何でしょうか?

島立:1つ目は「コンサート照明を好きでいること」です。どの仕事にも同じことが言えますが、楽しいことばかりではなく、時には大変なことや辛いこともあります。それでも「コンサート照明が好き」という気持ちを持ち続けることが、この仕事を続けるのに一番大切であると思います。

2つ目は「協調性」です。コンサートは照明だけでは成り立ちません。アーティストはもちろんですが、制作・舞台・音響など、多くの他セクションのスタッフと1つのコンサートを作っていきます。周囲との協調性、意思疎通や助け合う気持ちがとても大切です。

3つ目は「感受性を高めること」です。コンサート照明は空間を光でデザインする仕事です。会場を夕焼けや星空、あるいは雪景色などに演出することが求められます。例えば、綺麗な夕焼けとは何色なのか、満点の星空はどのような色に染まっているのかなど、普段の生活の中から感じ取ることがとても大切です。

▲片柳アリーナでのイントレ実習

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