NHK「天才てれびくん hello,」の番組制作に協力してきました。出演者であるてれび戦士たちがバンド演奏をしたいということで、全国学校軽音楽部協会が全面的にバック・アップ。パート・レッスン、バンド練習、楽器&機材の使い方、楽曲アレンジ、ステージ演出など、軽音楽部の日々の活動と重なる部分がたくさんありました。
小中学生5人からなる「てれび戦士」のバンド・メンバーは、年齢、性別、楽器経験などがバラバラです。ピアノ歴7年というキーボードのユウマ以外は基本的に楽器初心者で、ギターのマリアとベースのショウタは楽器に触るのも初めて。ドラムのゲンタは以前1週間だけレッスンを受けたことがあるという状態です。ボーカルのギュナイは、歌うことは好きだけど自信が持てていない様子…。
こういったレベルやモチベーションが異なる者同士がバンドを組むことは、軽音楽部でもよくあります。チームで1つのことを成し遂げ、メッセージを伝えることは簡単ではありません。しかし、本番収録は約2ヶ月後です。目標に向かって逆算していき、「今するべきこと」を全員がしっかりと理解することが大切です。
練習を3ステップに分ける
ベストな本番を迎えるには、個人のスキルを上げる「個人練習」、バンド単位で行う「バンド練習」、本番を想定した「ライブ練習」をきちんと整理して行うことが大切です。
今回は全員に講師をつけ、特に初心者のメンバーには楽器の構造、構え方、音が出る仕組みといった説明から、基本的な運指、ピックやスティックの持ち方、弾き方&叩き方、アンプの使い方、シールド・ケーブルのつなぎ方、チューニング方法などをレクチャーしました。こうした基礎は、個人練習の前の段階であり、部活動では先輩が担う仕事です。習いごとは始めが肝心。しっかりとした準備が上達のカギです。
演奏する楽曲は、WANIMAの「ともに」に決定しました。難しい曲なので、今回の企画用にキーやテンポを下げ、各楽器のフレーズやコード進行も簡素化しました。また、原曲はギター・メインでキーボードは入っていないのですが、ピアノやシンセサイザーが土台となるアレンジに変えました。軽音楽部でも、自分たちのレベルや楽器構成、方向性などを考えて楽曲をアレンジすることにも挑戦してみてください。技術的なスキル・アップも大切ですが、部活動でしかできない「みんなで良い合奏をする」ことに重きをおいた場合、時にはフレーズなどを簡単にしてしまうことも、バンド演奏を早くまとめる有効手段の1つです。
バンド練習で心を1つに
ラグビーには「One for All, All for One」という言葉があります。1人は全員のため、全員は1人のため、という意味です。バンド演奏もまったく同じです。遅刻が多かったり、演奏中に自分のことだけを気にしていては、なかなかアンサンブルはまとまっていきません。自分がこのチームの中でどんな責任を担っているのか、他のメンバーに迷惑をかけないようにするには…といったことを考えていく気持ちが、どんどんバンドを1つにしていきます。
しかし、そこでは当然ぶつかり合いが生じます。皆さんも少なからず経験があるのではないでしょうか。でも、それは自然なことです。それがクリエイティブであることの証拠であり、チームで何かをする時には必ず生じる過程です。だって、初心者の小中学生バンドにだってあることなんですから(笑)。でも彼らは、そういったことを経て、皆んなで何かを作り上げる楽しさ、仲間がいる心強さなども学んだようです。
▲本番前に最後の指導。心を1つにして約2ヶ月間の練習の成果を出そう
本番は「魅せる」ことも大事
今回の企画と軽音楽部の活動には、1つ大きな違いがあります。それは、てれび戦士たちが皆んなすでにタレント活動をしているということです。彼らは本番のプレッシャーにも負けることなく、「本番!」の声を笑顔とパワーに変えて最善のパフォーマンスをすることができます。もちろん、本番ではミスもありましたが、それ以上に彼らの想いや、みんなで音楽を届けたいという気持ちが伝わってきました。
軽音楽部においては、本番を想定した「ライブ練習」を繰り返すのみです。バンドやポピュラー・ミュージックはエンターテイメントでもあります。誰かに歌や演奏を聴いてもらうだけではなく、見て(魅て)もらうものです。派手なパフォーマンスをしろというわけではありませんが、視覚的なことも考えて練習を詰めていくことはとても大事です。
てれび戦士たちの「音楽で皆んなを元気にしたい!」という想いは、番組を見てくれた人にきっと伝わると思います。軽音楽部員の皆さんも顧問の先生方も、彼らの2ヶ月間の努力と汗の結晶をぜひ放送でご覧ください!
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放送:NHK Eテレ 2021年9月20日(月・祝)午前9時〜 通常 NHK Eテレ 毎週月曜〜木曜 午後6時20分〜