▲専門学校での実習を通して、機材の扱い方を学びます
音楽/エンタメ業界の仕事2022/PA(音響)エンジニア
音楽やエンターテインメントにまつわる職業や業界は多岐に渡りますが、一体どんな世界なのでしょうか。今回はPA(音響)エンジニアの仕事について、専門学校ESPエンタテインメント東京の澤田先生に伺いました。(DiGiRECO.JR VOL.2〜2022年7月号〜掲載)
音量や音質を調整し、観客に届けます
ー PA(音響)エンジニアの仕事について教えてください
澤田:とてもざっくりと言うと、ライブやイベントの際に出演者の出す音をマイクなどで拾い、お客さんにとって、ちょうど良い音量や音質に整えて、会場に流す仕事です。ライブの際、客席の後ろの方で大きなミキサーを操作しているスタッフを見たことがあるかもしれませんが、この人がPAさんです。軽音楽部で担当している人もいるかもしれません。
ちなみに、PAとは「Public Address(音響設備)」のことを指します。同じように、音を扱うスタッフとして「レコーディング・エンジニア」という仕事がありますが、レコーディング・エンジニアさんはアーティストの演奏している音を録音し、音を整えて、製品にする仕事です。一方のPAはアーティストが演奏している音をリアルタイムで調整し、お客さんに届ける仕事になります。
街のコンサートホール専属のPAさんのように、1つの現場で仕事をする人もいますが、ほとんどのPA会社に就職すると、いろいろな会場を回って、その場に合った音色を作ることになります。中には、日本中を移動しながら仕事をしている方もいます。
ー 入学前に、ある程度の知識は必要ですか? 高校時代にやっておいた方が良いことも教えてください
澤田:基本的に、専門知識は入学してから身に付ければOKです。大昔は、PAエンジニアになるには高校を卒業した後、音響会社に就職し、最初の1~2年を使って仕事を覚えつつ働く…というスタイルで人材育成をしていたのですが、本校をはじめとした音楽専門学校ができてからは最初の2年間を学校でスキルを覚える期間にして、その後、PA会社に就職する…というようなルートに固まっています。
中には、高校時代にPAを経験した方も入学してきますが、経験/未経験を問わず、マイクの種類やケーブルの巻き方から実践を通じて覚えてもらうので、PAについて取り組んでおいて欲しいことは特にありません。高校時代には専門知識を身に付けるのではなく、音楽やエンタメを広く見聞きしておいて欲しいと感じています。
また、一般的なPAエンジニアは毎回、別の会場で仕事をしますが、演目やジャンルも毎回異なります。「今日は都内でヘヴィメタルの仕事、来週は大阪でアイドルのコンサート…」みたいな感じです。ジャンルが異なれば、音の作り方も変わってきます。ヘヴィメタルの音作りでアイドルのコンサートの音響を手がけてしまうと、バックの演奏の音が大きすぎて、せっかくのアイドルの歌声が聞こえにくくなってしまいますよね。いろいろなジャンルの音源を聴いたり、ライブを見たりしておくと、何となくジャンルごとの傾向が見えてくると思います。ぜひ音楽やエンタメを広く、楽しみながら、いろいろと見聞きしてみてください。
ーこの仕事の楽しいところを教えてください
澤田:ライブ本番の盛り上がりは何にも代えがたいと思います。ライブの主役は、もちろんアーティストですが、アーティストの出音を最高のものにして、お客さんに届けるPAの仕事は責任重大です。自分がオペレートをしたライブで、お客さんが盛り上がっている姿や感動している様子を見るのがやりがいだと思います。
ー この仕事の大変なところを教えてください
澤田:「音響」という言葉のイメージとかけ離れるかもしれませんが、とにかく体力勝負の仕事です。ある日は朝から夕方まで、ある日は昼から深夜までなど、働く時間帯が不規則になりがちです。フェスなどの大規模なライブになってくると1週間単位で泊まり込み、夜も準備や片付けで稼働することになり、かなりタフな現場になります。
ー この仕事を続けるのに大切なことは何でしょうか?
澤田:いろいろとありますが、一番は「人と話すこと」が大切です。PAエンジニアをはじめとするライブスタッフは、いろいろな職種のいろいろな会社のいろいろな人と緻密に話し合いながら仕事を進めていきます。現場が変われば、一緒に仕事をする人も毎回変わっていきます。もちろん本番も大切なのですが、本番に至るまでの準備や話し合い、打ち合わせが成功のカギを握る仕事です。自分が仕事をする上で必要なことを相手にきちんと伝えること、相手が伝えてくることをきちんと理解すること、わからないことをわからないままにしないこと。他の仕事にも共通すると思いますが、これが一番大切だと思います。
また、PAの機材は日夜進歩をしています。ある日、現場に行ったら、使い方がわからないミキサーだった…!ということがないように、自分の商売道具である機材については日頃からリサーチをしておくのが大切です。
最後は、繰り返しになりますが、音楽やエンタメを好きでいることです。この仕事をする上でのモチベーションになることが多く、仕事にも直結してくるので、就職してからもいろいろな音楽を聴いてください。