▲安全に気を配りつつ、1つ1つの灯体を取り付けます
職業としての音楽/エンタメ業界2022/照明にまつわる仕事
音楽やエンターテインメントに関する職業や業界は多岐に渡りますが、一体どんな世界なのでしょうか。今回は照明にまつわる仕事について、専門学校名古屋ビジュアルアーツ/音響学科 照明コースの野田先生に伺いました。(DiGiRECO.JR VOL.48〜2022年3月号〜掲載)
観客の反応を肌で感じられる仕事です
ー 照明にまつわる仕事全般について教えてください
野田:照明の仕事はコンサートやイベントをはじめ、演劇やテレビなど、様々な演目に携わることになります。具体的には、それぞれの現場に相応しい灯体や機材を選ぶところから始まり、現場で色味や動きをプログラミングし、本番では曲のキッカケや事前に決められたタイミングに合わせてスイッチを押して、明かりをコントロールする…という仕事です。
本校に入学する学生の大半はコンサートやライブを見て、照明に興味を持った…という人が多いのですが、その他にも、単純にお芝居を見たり、音楽を聴くのが好きで、そういった中で「自分も裏方として、この業界の仕事に携わりたい」という動機で進学を希望する学生もたくさんいます。
ー 入学前に、ある程度の知識は必要ですか? 高校時代にやっておいた方が良いことも教えてください
野田:特に「入学前に、これをした方が良いです」というものはないのですが、実際に仕事をしていく中で電流や電圧といった「電気」の知識が必要になるので、それらの簡単な復習ができると良いですね。また、機材の重量や積載量を計算する場面も多々あるので、数学の知識も今のうちから蓄えておけると、将来も役立てることができると思います。
仕事になると、好き/嫌いにかかわらず、いろいろな分野の照明に携わったり、様々なジャンルの音楽を聴いたり、お芝居を見たり…ということが多くなるので、学生のうちからライブ映像やミュージックビデオを見たり、音楽番組を視聴するなど、いろいろな映像作品を見て、その中で「かっこ良いな…」と思った照明や演出のメモを取り、自分の知識としておくのは高校生のうちからできて、実際に照明の仕事に携わることになってからも生かしていけることではないでしょうか。
なお、楽器を演奏できたり、譜面が読めるというのは、できるに越したことはないですが、必須ではありません。照明のプランを考える際に、いわゆる「譜割」といって、Aメロが何小節で、Bメロが何小節で…という数え方をするので、そういう場面では軽音楽部や吹奏楽部出身の人は入り込みやすいのではないでしょうか。コンサート系の照明に携わるのであれば、そのスキルは重宝すると思います。一方、演劇系の照明はまったく異なり、「決められたキッカケを逃さずに反応する」という反射神経に通じる部分の方が重要なので、楽譜を読めたり、楽器を演奏できるというのは、そこまで重要なポイントではないと考えています。
ちなみに、本校に入学する学生が所属していた部活動は、照明コースは軽音楽部や吹奏楽部、演劇部で照明を担当しており、そこで照明や裏方の仕事に興味を持った…という人が多い印象があります。
ー この仕事の楽しいところを教えてください
野田:照明の効果は目に見えてわかるものなので、出演者や観客の反応を身近に感じられるところが楽しい部分だと思います。実際に演者の方から「この曲の、あの照明がかっこ良かった!」と言っていただけたり、コロナ禍以前のことになりますが、コンサートの現場でも会場がザワザワ…としている中、定刻になって会場が暗転し、「おお〜!」という大歓声を聞くことができるなど、照明に対するレスポンスを肌で感じられるのが醍醐味です。そのキッカケを照明担当である自分が握っているので、責任重大なのですが、やりがいを感じられるシーンの1つだと思います。
ー この仕事の大変なところを教えてください
野田:どうしても、本番前日は夜遅くまでの作業になりがちなので、大変な部分の1つです。加えて、野外でのコンサートの場合は空が暗くならないと照明が映えないので、必然的に夜間の仕事になります。また、照明の仕事は大きな機材を運んだり、重たい灯体を取り付ける場面も多々あるので、体力に自信のない人は大変に感じてしまうかもしれません。
ー この仕事は、どんな人にオススメですか?
野田:照明の仕事は自分だけで成り立つものではなく、いろいろなシチュエーションがあったり、様々なセクションの人たちと一緒になって、1つのステージを作り上げることになります。そのため、人と関わるのが好きであったり、音楽はもちろん、コンサートやイベントが好きなど、いろいろなことに自分から率先して挑戦していけるような、好奇心が旺盛な人が向いていると思います。
ー この仕事を続けるのに大切なことは何でしょうか。3つほど教えてください
野田:一番大切なことは、コンサートやイベントなどを「好きでいること」だと思います。好きだからこそ、頑張ろう!と思えますし、夜遅くの作業になってしまっても、かっこ良くしよう!という思いがあるなど、気持ちの部分が挙げられます。
2つ目は、たくさんの人たちと協力して、1つのものを作り上げることができる「協調性」。3つ目は、新しい機材や技術が次々と登場したり、便利な環境が整ってきている中で、常に新しいことに挑戦し、学ぼうとする「チャレンジ精神」です。照明の仕事は学校で教わること以上に、現場で学ぶことが多いので、どんなことでも勉強するぞ!という気持ちで取り組める姿勢が大切だと思います。