▲声優の基礎・アフレコ(アニメ・外画吹替)の授業
職業としての音楽/エンタメ業界2021:声優にまつわる仕事
音楽やエンターテインメントに関する職業や業界は多岐に渡りますが、一体どんな世界なのでしょうか。今回は声優にまつわる仕事について、専門学校名古屋ビジュアルアーツ/パフォーミングアーツ学科声優コースの園田先生に伺いました。(DiGiRECO.JR VOL.46〜2021年12月号〜掲載)
あらゆるものを演じられるのが醍醐味です
ー 声優にまつわる仕事全般について教えてください
園田:声優の仕事で、高校生の皆さんにとって一番メジャーなところとしては「アニメ」が挙げられると思います。それから、「ゲーム」ですね。ゲーム声優という言葉があるくらいで、昨今人気の仕事の1つになっています。
また、「洋画(外国映画)」の吹き替えも声優の仕事の定番で、近年はハリウッド映画をはじめとする英語の吹き替えだけでなく、韓国のドラマや映画の吹き替えも人気です。こういった声の仕事がメインになる中で、あとはナレーションや舞台、ミュージカルに出演する声優も増えています。また、最近増えてきているのは「朗読」でしょうか。声優による朗読公演がブームになっており、舞台公演の中でも割合が増えてきています。このように、現在の声優の仕事は多岐に渡っています。
ー 入学前に、ある程度の知識は必要ですか? 高校時代にやっておいた方が良いことも教えてください
園田:特に知識やスキルは必要ありません。まったくゼロからの状態でも、本校では基礎の部分から1つずつ講義を行っていくので、安心していただければと思います。
強いて言えば、ドラマや映画、舞台やテレビなど、コンテンツは何でも良いのですが、様々な作品を見聞きしたり、いろいろな「人」を見ておくのをオススメします。具体的には、普段生活している中での「人」を見て欲しいと考えています。声優の仕事というのは、一言で言うと「役者」…演じることです。そのため、例えば、「酔っ払っているサラリーマン」のアフレコをする場合、実際に酔っている人のことを観察し、様子を理解しておかないと、リアルな行動や言い回しを表現することはできません。ですので、普段からの人間観察が大切で、それが声優の仕事にも生かせると考えています。
ちなみに、本校の学生は「こんな声優になりたい」という、フワッとしたイメージを抱いて入学する子が大半です。何となくアニメやゲームの世界に憧れて、声優を目指したいと考えている学生が多いのと、アイドルの案件に携わりたい学生も増えています。アニメの作品が世に出ていき、そこから派生して「主題歌を担当します」「作品の中の曲を歌います」というような、声優だけでなく、歌ったり、踊ったりしたいという学生も多いです。声優としてやらなくてはならないことに辿り着けば、きっかけは何でも良いと思います。
ー この仕事の楽しいところを教えてください
園田:先述の通り、声優の仕事は「役者の仕事」と言われています。役者の仕事の一部…声を駆使したものが声優の役割になるのですが、「自分以外のあらゆるものになれる」というのが、一番の魅力だと思います。俳優とすごく近いところにありますが、両者の一番の違いは、俳優は人物になりきりますが、声優は人物だけでなく、犬や猫からドラえもんのようなロボットまで、いろいろなものに声で感情を注ぎ、表現できる点が面白く、楽しいところだと思います。
やりがいを感じる場面は多々ありますが、自分自身も楽しんで演技をする中で、「あの人の演技、良いなぁ…」と思ってもらえたり、劇場公演などで直接反応をいただけると嬉しいですね。割と声優は人気者になりたくて、目指す人たちが多い世界なんです(笑)。モテたいからミュージシャンになる!みたいなのと同じです。
ー この仕事の大変なところを教えてください
園田:声優に興味がある高校生にとって、一番関心があるのはアニメやゲームの世界における声優業だと思います。視聴者に伝わるのは華やかな部分だけだと思いますが、そこへ辿り着くまでには基礎トレーニングをはじめとする地味な練習や作業があります。そこで諦めたりせず、なかなか結果が出なくても続けていかなければいけないのが、大変な部分かもしれません。
ー この仕事は、どんな人にオススメですか
園田:ズバリ、いろいろなことに興味を持てる人です。好奇心旺盛な人にオススメだと思います。遊び心を持ちながら様々なことに取り組んで欲しいですね。お笑い芸人さんだと想像がつきやすいと思うのですが、養成所に通いながら稽古を続けて…というのが声優の世界にもあるので、そういった下積みの時代も楽しみながら過ごしていけるような人が、この業界には向いていると思います。
ー この仕事を続けるのに大切なことは何でしょうか
園田:アニメやゲームに代表される「声優」という世界は華やかに見える反面、すぐに自分の夢が叶ったり、理想に近づける、簡単に結果が出るような業界ではないので、何事にも粘り強く頑張れる、すぐに諦めない気持ちが大切です。経験を積んでいく過程自体を楽しめると良いと思います。それから、好奇心旺盛に遊び心を持ちながら過ごす一方で、シビアな場面では真面目に取り組むなど、頭の切り替えがきちんと行えること。意志の強さにも通じる部分と言えます。3つ目は、何よりも自分自身が表舞台に立つ「エンターテイナー」であること。そこにいる誰よりも自分が楽しんでしまうような積極的な姿勢が大切です。