レポート

音楽/エンタメ業界の仕事

目線を30度上げてみましょう!(音楽の仕事)

▲音楽学科学科長の高田耕至先生。「音の可能性が劇的に広がっている今、音楽学科も新しく生まれ変わりました」

職業としての音楽/エンタメ業界2021

音楽やエンターテインメントにまつわる職業や業界は多岐に渡りますが、芸術大学で学び、自分の可能性を広げるのも選択肢の1つです。今回は「SUPER NEW」というキャッチフレーズのもと、新しく生まれ変わった大阪芸術大学の音楽学科について、学科長である作曲家・音楽プロデューサーの高田先生に伺いました。(DiGiRECO.JR VOL.45〜2021年10月号〜掲載)

目線を30度上げてみましょう!

ー 新しく生まれ変わった音楽学科について教えてください

高田:私は大阪芸術大学を卒業後、28年近く音楽制作や音楽ビジネスの現場にいたので、音楽に対する目線や視座が、これまでの先生方と少し違っているかもしれません。レコード制作から放送通信まで、あらゆる分野で音楽制作を経験してきた中で、学生が学んでいることをいかに世の中に結びつけていくのか…という部分では、私なりの様々なアイデアを持っているつもりです。こういったアイデアを学生と一緒になって具現化していくことは、これまでになかったことかと思いますし、今後の音楽学科に大きな変化をもたらすと確信しています。例えば、学生が先生に対して「私、作曲家になりたいんです」と相談したとすると、それに対して、その世界で実際に仕事をしている人であれば、より説得力のある話ができるのではないでしょうか。その点、大阪芸術大学の先生方は実際に現場で活躍されている方々ばかりですので、プロの方々の直接的な指導で、実践的な内容を学べることは非常にアドバンテージが高いのではないかと思います。

それに関連して、私は大学の授業が世の中とリンクした内容になっていることが重要だと考えています。例えば、今はYouTubeやApple Music、Soptifyをはじめ、中学生や高校生、大学生でも、自分の作品を世界に向けて発信し、販売できるような時代になりました。その際に一番トラブルになるのが「ライセンス」にまつわる問題です。「原盤権は誰のもの?」「著作権はどうなるの?」「出版権って何?」「YouTubeに投稿したけれど、警告が出てしまった。どうすれば良いの?」など、学生にとっては難しく、ハードルが高いように感じてしまいがちですが、「作曲」というのは、それらの諸権利と切っても切り離せない関係にあることを理解し、仕組みを学んでおくことが大切です。ところが、こういった重要な部分を日本の音楽大学や芸術大学は深く掘り下げようとせず、学生にもきちんと教えていないのが実際のところではないでしょうか。その点、本学の音楽学科では自分の作品や演奏、研究といったものが、どのように社会的な接点を持てるのか。どのように世の中に発信していくか、ということにおいて「SUPER NEW」なカリキュラムを通して、学生たちを未来に導いていけたら…と考えています。

ー 入学前に、ある程度の知識は必要ですか? 高校時代にやっておいた方が良いことも教えてください

高田:本学は芸術大学であり、とりわけ音楽学科を目指すのであれば、楽典に関する基礎知識や理論等を高校時代に学んでおくのは「やっておいて良いのに越したことはない」と思いますが、私が何よりも重視したいのは「音楽に対する姿勢」です。いくらピアノやギター、ドラムなどの演奏が上手でも、それを「どうやって世間に向けて発信するか?」と考える視点や姿勢がない限り、それは楽器を演奏する才能がないのと変わらない状態だと思います。よく学生から「音楽の世界で成功するためには、どうしたら良いですか?」「今の僕に何が足りませんか?」という質問を受けるのですが、私は「それは簡単なことだよ。挑戦するか、しないかだけ。挑戦した人は成功する確率が上がるけれど、挑戦しなければ、才能がないまま埋もれていってしまうだけだよ」と答えるようにしています。ですので、あまり深く考えないで、失敗しても構わないから、大学1年生のうちから挑戦し、自分の作品を発信し続けることが大切だと伝えています。

ー 音楽/エンタメ業界で仕事を続けるのに大切なことは何でしょうか

高田:一概には言えない部分もあるのですが、一番求められるのは「コミュニケーション能力」の高さだと思います。例えば、オーディションで候補者が同点で、同じようなポテンシャルを持っている場合、その人のコミュニケーション能力を評価するのです。これは音楽に限ったことではありませんが、「笑顔1つで、どれだけ相手の心の中に入っていけるか?」「質問に対する受け答えや目線、表情はどうか?」などの人柄や姿勢まで、「常に相手から見られている」というのを意識することが大切です。

また、皆さんが抱いている夢や目標の「目線」を常に上げることを意識して欲しいと思います。高校野球を例にすると、甲子園のグラウンドに立つことが目標の高校と、甲子園で優勝することが目標の高校とでは、自ずとスタートラインが違ってきますよね。同じ高校野球でも、甲子園に出るための練習と甲子園で優勝するための練習ではトレーニングのメニューや質が異なるように、今まで抱いてきた夢や目標を達成するためには、今の状態をキープするのではなく、少し上…「目線を30度くらい上げてみよう!」という風に伝えています。

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