レポート

音楽/エンタメ業界の仕事

相手の要求をくみ取れる力が大切です(サウンドクリエイターの仕事)

▲カリキュラムに基づき、基礎的な部分から丁寧に指導

職業としての音楽/エンタメ業界 2021

音楽やエンターテインメントにまつわる職業や業界は多岐に渡りますが、一体どんな世界なのでしょうか。今回はサウンドクリエイターの仕事について、日本工学院専門学校のミュージックアーティスト科/サウンドクリエイターコースの下條先生に伺いました。(DiGiRECO.JR VOL.44〜2021年8月号〜掲載)

相手の要求をくみ取れる力が大切です

ー サウンドクリエイターの仕事について教えてください

下條:ポップスの曲を作ったり、アーティストに楽曲を提供したり、一方では、ゲームの音楽を作ったり、テレビやニュースのBGMを制作するなど、端的に言うと「音楽(音)を作る仕事」です。ユニークなところでは、映画やテレビ番組などに臨場感を与える「フォーリーサウンド(効果音)」を作ることもサウンドクリエイターが手がけており、例えば、刀が「カキン、カキン」と鳴っているイメージに近い音を作るのも仕事の1つです。

ー 入学前に、ある程度の演奏スキルや知識は必要ですか?

下條:専門学校では、基礎的なところから学校のカリキュラムで指導を行うので、楽器の演奏やパソコンでの音楽制作が未経験でも、まったく問題なく進められるような環境を整えています。高校生のうちからやっておいた方が良いのは「たくさんの音楽を聴く」ということでしょうか。なぜかと言うと、人間は見たり、聞いたりしたものからしか、アウトプットができないんですよね。今まで聴いてきた楽曲や音楽ジャンルが元となり、多種多様なメロディーやコード進行、アレンジなどを生み出すことができると思うので、ぜひ選り好みをせずに、いろいろな音楽を聴いておくことをオススメします。

また、これは教員としての私のポリシーでもあるのですが、本当に良い作品やアレンジしか誉めないようにしています。何でもおだてて、褒めてしまうと、それ以上の能力を引き出せなくなってしまうと考えており、あえて厳しい目で評価し、本当に「良いな!」と思ったものしか褒めないように心がけています。それに、言われた側の本人も、場合によっては100%納得していないものの、作品を提出した…ということがあると思います。それなのに「良いね!」と言われてしまうと、あまり良い気持ちがせず、不完全燃焼に終わってしまうと思うので、学生とはシビアに向き合っています。

ー この仕事の楽しいところや、やりがいを教えてください

下條:仕事の大半を一人で行うものなので、どうしても大変に感じたり、しんどくなってしまうことがあります。ですが、そういう思いをしながら作ったが曲がリリースされ、いろいろな人たちが聴いてくれたり、「良かったよ!」といった感想が聞けた時はホッとした気持ちになり、「作って良かったな…」という風に、やりがいを感じます。

ー この仕事の大変なところを教えてください

下條:作業自体は一人で行うのですが、その先には依頼者である「クライアント」がいます。その方々と一緒に仕事を進めていく中で、相手は音楽や楽曲制作の知識や経験が豊富なわけではないので、先方からの要求や難題を噛み砕いて、最大限に良い結果を出せるようにしなくてはいけない部分が大変に感じます。ここのボタンを掛け違えていると、出来上がった結果が望みのものではなかった…となり、残念な結果に終わってしまうので、相手の要求をくみ取る姿勢が大切です。

ー サウンドクリエイターとして、仕事をするために大切な要素は何でしょうか

下條:1つ目は「向上心」だと思います。音楽はファッションと同じで、日々進化を続けており、どんどんシーンが変わっていくものなので、そういった部分にしっかりとアンテナを向けられて、適応することが大切です。楽曲の作風も、ずっと同じようなものばかりを作るのではなく、ヒップホップやローファイなジャンルも手がけるなど、幅広く対応していける姿勢や柔軟さが必要だと思います。

2つ目は「円滑なコミュニケーション能力」です。楽曲を制作したり、アレンジを施していく上で相手の要望をくみ取り、それを体現しなくてはいけないので、そこでのコミュニケーションがとても大切です。また、表現が抽象的になってしまった際に、相手が本当に伝えたいことをうまく誘導し、解決に導いてあげる「気遣い」も必要な要素の1つだと思います。

3つ目は、仕事全般に言えることかもしれないのですが、「楽しめるかどうか?」という点です。サウンドクリエイターの仕事は一人で部屋にこもって作業をすることが多いので、思い通りのものができないと、気持ちが暗くなったり、焦ってしまうことがあります。ですが、そんな大変な状況の中でも、良いフレーズができた時に「やった、できたぞ!」という風に一人で小躍りができると良いですね。単純なことではあるのですが、そういった少しの変化を楽しめたり、自分の作品を好きになれるポジティブな思考の人というのが、この仕事に向いていると思います。

▲DAWソフトを駆使し、楽曲やBGM、効果音を制作

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