東京都軽音連の軌跡 第8回

高等学校における軽音楽活動の健全な向上発展と、加盟校が相互の親睦を図ることを目的に2007年の11月に発足。2009年には、東京都高等学校文化連盟に軽音楽部門として認可を受ける。現在、加盟校数は116校、所属部員数は約5,800名を数える大きな組織へと発展。生徒たちが演奏技術や芸術性を競うことはもとより、マナーやルールを守ること、親睦を深めることなど、学校教育の一環としての軽音楽活動の推進に主眼を置いている。活動内容、加盟校、沿革などは連盟公式ホームページに掲載。

http://www.tokyo-keion.com/


前号では、大会のエントリー曲や審査基準、音響・照明などについて、レギュレーションや連盟の考え方をご紹介しました。今回もその続きを書きます。

まずは大会における掛け持ち(メンバーのバンド間での重複)ルールについてです。東京では1校から複数のバンドが出場できる夏の大会において、掛け持ちを条件付きで認めています(右下資料参照)。これは1人でも多くの加盟校部員が大会に参加できるように、という配慮からです。例えば、2つのバンドがあって、ドラマーが掛け持ちをしている場合、重複を一切認めないと、どちらかのバンドが出場の機会を失ってしまいます。このようなことを避けるために第1回大会から、このルールが採用されています。しかしながら、優秀なメンバーが複数のバンドを組んでエントリーし、その多くが入賞したり、ボーカルがバンドと弾き語りの両方で出場する、ということが見られるようになりました。これは公平性(機会均等)という観点からは、あまり好ましくない状況と言えます。また、この上位大会となる全国大会ではメンバーの重複を認めていないので、掛け持ちのメンバーがいる2つのバンドが進出の権利を得た場合、どちらかが辞退しなければなりません。このような問題が起きる度に掛け持ちルールの見直しが検討されてきましたが、現在も変更には至っていません。1人でも多くの生徒に出場の機会を与えたいという、発足当初のコンセプトを連盟は今も最も重視しているのです。

また、そのコンセプトから東京の大会には、付属校の中学生が高校生と一緒に大会に出場することができます。高校生の大会に中学生が出場することを疑問視する声や付属校に有利なルールになるのでは、という声も聞かれましたが、他の団体でも同様の例がありますし、そもそも中学生に負けるようではという意見もあり、これも現行ルールとして残っています。

大会の回数を重ねるごとに、新たな問題が出てきます。我々はその都度、役員会で検討することはもちろん、加盟校に毎年行っているアンケートの中で顧問の先生方のご意見を伺いながら、ルールの改正や新しいルール作りを行ってきました。大きな議論を呼んだものの1つに打ち込みの音楽の是非がありました。

シーケンサーやシンセサイザー音源などの電子楽器が発達した昨今、電子楽器を駆使した音楽が普及してきました。中にはすべてがプログラミングされた音源を流し、ミュージシャンはステージで踊っているだけというシーンも見られます。このような形でエントリーしてきたバンド(あるいはソロ)をどのように評価するのか、連盟の姿勢が問われることになりました。実際に、ボーカルがオケを作ってそれをバックに歌ったり、ギター&ボーカルが他のパートを打ち込んで独演するなど、カラオケの形態でのエントリーが見られるようになり、審査員の先生から「どう評価したら良いのでしょう」と質問されることが多くなりました。東京の審査基準については前号でお伝えした通りですが、大会の主催者として、これらについて審査員の主観にお任せするのではなく、連盟の姿勢を打ち出す必要が出てきたのです。

役員会や加盟校アンケートで寄せられた意見には賛否両論ありました。いくつかご紹介しますと、「バンドは人が集まって、生でやるもの」「生演奏が基本で、補完的な使用に留めるべき」「ひとりカラオケでのエントリーは認めるべきではない」「シーケンサーはダメだがサンプラーは良い? では、ハーモナイザーは?などと線引きするとなると、キリがない」「一生懸命曲を作って、アレンジして打ち込んだものも認めてあげたい」「最新の技術を駆使できる高校生にも発表の機会を与えるべき」など、どれも一理あるご意見ばかりでした。

全体的には、何らかの規制を設けるべきという意見が多かったのですが、役員会で更なる検討を重ねて打ち出した結論は非常にシンプルなものとなりました。シーケンサーなどの使用について、エントリーの段階では一切規制は設けず、審査基準に「生演奏を重視する」という一項を加えることにしたのです。大会では様々な形態の音楽を受け入れる一方、審査する上での方向性を問われれば「生演奏に重きを置いている」という意味合いです。

2014年度の総会でこの発表をしましたが、その後もシーケンサーを使ったバンドでのエントリーはあり、入賞しているケースもでています。しかしながら、「ドラマーがいないので」とか「自分たちの音楽を表現する上で」という理由での使用が多く、カラオケの形態でのエントリーはほとんどありません。

次号でも引き続き、大会のレギュレーションについてお伝えします。

2008年の連盟発足記念ライブで、本校部員がシーケンサーに打ち込んだオリジナル音源をバックに弾き語りをした。この時、既に「コンテストになったら、このようなスタイルはどう評価されるのだろう」と顧問の間で話題になっていた


東京都高等学校軽音楽連盟 委員長 成女高等学校 LM-CLUB顧問

佐々木弘人

連盟の設立に携わり、現在委員長を務める。LM-CLUB(軽音楽部)では、すべてのパートの指導にあたり、作詞・作曲・アレンジ・音楽理論も教える。部の公式HPには活動の様子や大会での成績が掲載されているほか、200曲近くにのぼる歴代のオリジナル曲が紹介され、一部試聴もできる。http://lm-club.com/

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