東京都軽音連の軌跡 第16回

高等学校における軽音楽活動の健全な向上発展と、加盟校が相互の親睦を図ることを目的に2007年の11月に発足。2009年には、東京都高等学校文化連盟に軽音楽部門として認可を受ける。現在、加盟校数は116校、所属部員数は約5,800名を数える大きな組織へと発展。生徒たちが演奏技術や芸術性を競うことはもとより、マナーやルールを守ること、親睦を深めることなど、学校教育の一環としての軽音楽活動の推進に主眼を置いている。活動内容、加盟校、沿革などは連盟公式ホームページに掲載。

http://www.tokyo-keion.com/


今回は少し趣向を変えて、軽音楽部と学校の関係について考えてみたいと思います。

私は自校で軽音楽部(LM-CLUB)を立ち上げ、顧問をしているうちに、気付くと四半世紀が過ぎていました。プロフィール欄にも記載の通り、生徒に技術や理論の指導をし、プライベートでも音楽に携わっています。一方、軽音楽部の顧問の中には、頼まれて引き受けている方も少なくありません。「音楽は聴くだけです」とか「まったく何もわかりません」とおっしゃる方もいらっしゃいます。以前の号(連載第13回)で「軽音楽部の顧問は大変」という内容の記事を書きましたが、自分の興味とは関係なく引き受けていらっしゃる先生にとって、軽音楽部を運営していくことは本当に大変な仕事ではないでしょうか。それでも私の知る限り、連盟に加盟している顧問は、生徒たちのために熱心に活動されている方ばかりです。それは裏を返せば、音楽活動に打ち込むことができる生徒がたくさんいるということです。ノウハウをご存知の先生がけん引していく部もあれば、生徒たちの主体的な活動を支援していくスタイルの部もありますが、いずれにせよ部員たちは顧問の先生の支えによって円滑な活動ができているのです。

ところが、顧問が熱心に指導している部であっても、必ずしも順風満帆に活動できているわけではありません。連載の第14回で軽音楽部の教育的意義について詳しく書きましたが、「そういうことはなかなか理解してもらえず、軽音楽部への風当たりは相変わらず強いんですよ」という声が聞こえてきます。どんなに活躍しても学校から認めてもらえないとか、部の活動環境に関して協力が得られないという状況で、懸命に部を運営している先生も少なからずいらっしゃいます。特に教育的な指導をしっかりとなさっている方からこのような声が聞こえてくると、とても残念な気持ちになります。

概して学校という組織は、旧態依然とした考え方が支配的で、新しいものを受け入れる柔軟さに欠けるところがあります。しかしながら、2020年の教育改革のキーワードの1つに「多様性を受け入れる力の育成」があります。多様性を認める教育ができる学校は、純粋に軽音楽部で頑張っている生徒たちを認めることができるはずです。軽音楽活動を通して、日々多くのことを学んでいる生徒たちが、そして、教育的な視点から生徒指導にあたっている顧問の先生たちが、ストレスなく活動できるようになることを願ってやみません。

東京都の軽音楽連盟を発足させた時に「誰もが認める公式大会の開催」という大きな目標がありましたが、「各校で孤軍奮闘している顧問の先生が横のつながりを持つ」ということも設立理念の1つに掲げました。これはまさに、当時各学校で奮闘されていた軽音楽部の顧問の多くが、学校内外で正当に評価され、活躍の場を持てることを目指していたからです。それから10年が過ぎ、各校や軽音楽部をとりまく環境は大きく変化してきましたが、その間、加盟校の先生たちは横のつながりを作り、技術指導のみならず、生活上の指導についても研鑽を重ねてきました。「学校で一番生徒がきちんとしている部」、「成績優秀者の数が一番多い部」、「進学率が一番良い部」のような評価を得た部や「軽音楽部の生徒は挨拶ができて素晴らしいですね」とか「軽音楽部にお預けすれば安心です」と言われるような部を築き上げた先生もいらっしゃいます。このように大会での受賞などとは別の面で、目に見える形での成果を出し、学校や他の教員に認めてもらうことに成功した部は少なくありません。また、こうした努力を各顧問が続けてきたからこそ、軽音楽部をとりまく環境が望ましい方向に変わってきたのです。

公式大会を観にいらした校長先生や一般の先生方が「どこの学校の生徒たちも立派な演奏をし、礼儀も正しくて素晴らしい」と感想を伝えてくださることがよくあります。連盟は各校の活動環境を向上させるために、これからも様々なサポートをしていきたいと思っています。また、それこそが連盟発足の理念であることを忘れずにいたいと思います。

ところで、私は連盟が発足した当時に「TKKR  BAND CLUB」という顧問の先生が集うバンド・サークルを立ち上げました。顧問同士が横のつながりを持つには、音楽活動で意気投合するのが一番の近道と考えたからです。また、顧問も指導するばかりでなく、部員たちと同じステージに立ち、手本となったり、ダメ出しをされることも、また教育の1つと考えています。会員の方々は自校の校務や部活指導に追われ、さらに役員業務やご自分の音楽活動などで多忙極まる中で、この趣旨に賛同し、継続的に参加されています。次回はその活動について紹介させていただこうと思います。

東京都の公式大会では、会場整理・誘導・出場者のサポートなどを役員校の部員が協力して行う。仕事ぶりはもちろん、挨拶や言葉遣いなども素晴らしく、彼らの活躍は軽音楽部全体のイメージアップにもつながっている


東京都高等学校軽音楽連盟 委員長 成女高等学校 LM-CLUB顧問

佐々木弘人

連盟の設立に携わり、現在委員長を務める。LM-CLUB(軽音楽部)では、すべてのパートの指導にあたり、作詞・作曲・アレンジ・音楽理論も教える。部の公式HPには活動の様子や大会での成績が掲載されているほか、200曲近くにのぼる歴代のオリジナル曲が紹介され、一部試聴もできる。http://lm-club.com/

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