東京都軽音連の軌跡 第15回

高等学校における軽音楽活動の健全な向上発展と、加盟校が相互の親睦を図ることを目的に2007年の11月に発足。2009年には、東京都高等学校文化連盟に軽音楽部門として認可を受ける。現在、加盟校数は116校、所属部員数は約5,800名を数える大きな組織へと発展。生徒たちが演奏技術や芸術性を競うことはもとより、マナーやルールを守ること、親睦を深めることなど、学校教育の一環としての軽音楽活動の推進に主眼を置いている。活動内容、加盟校、沿革などは連盟公式ホームページに掲載。

http://www.tokyo-keion.com/


前号で、軽音楽部の活動には「21世紀に求められる学力」を養う絶好の教育環境があることを書きました。顧問にとっては日々の指導の中で感じられる当たり前のことも、軽音楽部の活動についてよくご存知ない先生や保護者には、その教育的意義がなかなか伝わりません。そもそもバンド活動は、メンバーが各パートに分かれ、自分の役割を果たし、協力して1つの音楽を作り上げていくものです。そこに着目するだけでも、教育手段として有効であることがわかると思うのですが、なかなか肯定的なイメージを持ってもらえないのが現実のようです。

この誌面をはじめ、大会での挨拶や講演など外に発信する機会がある度に、私は「教育の一環としての軽音楽活動」に言及していますが、前回の記事を読んでくださった方から、「教育的な意義をわかりやすく言葉にまとめてくれて良かった」「何となく感じていたことが具体的に書かれていて、活動に自信が持てた」「他の先生(軽音楽部のことを理解していない先生)に読んでもらいたい」などの感想をいただき嬉しく思いました。学校教育における軽音楽活動の有効性について、漠然とではなく具体的に共有し、関係者全員の力で周知していけたらと思っています。もちろん、軽音楽活動を教育として捉え、真面目に取り組む部活動が増えていくことが大前提になるのですが…。

さて、今回はそのような意味合いも含めて、高文連の一部門(専門部)としての本連盟の活動について書きたいと思います。

連盟を立ち上げた当初、都高文連に加盟するメリットを、私自身はあまり感じていませんでした。神奈川県の連盟役員の方からも高文連に所属する意義を伺っていましたが、公的組織の一員として制約を受けながら活動していくより、闊達自在な活動を

目指すべきと考えていたのです。しかしながら、都立高校の先生を中心に、高文連への加盟への機運が高まる中、教育活動の一環としての軽音楽活動を推進していく上で、公が認める団体であることの大切さを理解し、加盟に前向きになりました。

当時の都高文連には、軽音楽部を歓迎する雰囲気はあまりなく、まずはその方々に軽音楽活動の教育的意義を地道に訴えていく必要がありました。この組織の先人たちは、軽音楽活動が教育的に行われることをほとんどイメージできていなかったようです。しかしながら粘り強い交渉を重ねた結果、連盟発足の約1年半後に軽音楽部門の加盟が認められました。そして、初年度に「東京都高等学校対抗バンドフェスティバル」という大会を、都高文連の部門大会(東京都高等学校文化祭軽音楽部門大会)として行うこととなりました。これによって、都教育委員会ならびに都高文連が主催する純然たる公式大会を開催できるようになったのです。以前にも書きましたが、連盟発足のための意見交換会に集まった顧問からは「学校から参加を認めてもらえる大会がない」、「民間の大会で入賞しても学校で表彰してもらえない」、「公欠で参加でき、調査書に書いてあげられる公式大会を部員に提供したい」などの声が聞かれましたが、都高文連に加盟して部門大会を開催することによって、そのすべてを実現することができたのです。

一方、高文祭の一部門大会である以上、様々な制約を受けることにもなりました。まず大会の経費はすべて都が賄う、という約束事があるため、エントリー費を出場校から徴収できない上、決められた予算で運営することを求められました。使用ホールや音響照明設備をはじめ、大小合わせて多くの制約を受けることになったのです。また、都高文連が物事を進めるスピードやプロセスは、我々のそれとは大きく異なり、スピード感をもって運営にあたってきた私たち役員は、戸惑ってばかりでした。

また、都の予算や要求が年々変わっていくことも、継続的に大会を開催する上で障害となりました。一定の水準を保ちながら生徒が目標とする大会を運営していくことに主眼を置いていたので、来年度の予算がどうなるかわからない、また自前で補てんすることもできない…というのは大きな不安材料でした。都との交渉でなんとかこれまで大会を続けてきましたが、この問題が解消される見込みは未だに立っていません。

とはいえ、都高文祭の部門大会として行われる秋の大会は誰もが認める公式大会で、入賞すれば都庁で表彰されるという名誉ある大会として、生徒の間でも定着しました。都高文祭の開会式や閉会式では、演劇、放送、書道など十数ある部門の生徒たちとともに、軽音楽部門の生徒たちも名を連ねます。式に参加した生徒たちは、他の部門の生徒たちの活躍に触れ、大いに刺激を受けています。このような環境も、本連盟が都高文連に加盟しているからこそ生徒たちに提供できるのです。

本連盟は発足して、10年の節目を迎えました。ここまで順調に発展することができたのも、役員の先生方の熱い思いと、加盟校の顧問の先生方のご協力があってのことは言うまでもありませんが、高文連の組織の一員として公のお墨付きを得て活動をしていることも、大きな支えであったと言えるでしょう。

2022年には、全国総文祭が東京で行われます。軽音楽部門大会の開催に向け、都高文連との具体的な話し合いも始まりました。47年に一度の大きな大会を成功させるべく、都高文連と歩調を合わせて、準備を進めていきたいと思っています。

都庁で開かれる都高文祭の開会式では、各部門が活動の紹介を行う。軽音楽部門は連盟の代表生徒がスピーチを行い、前年度の入賞バンドが生演奏を披露している


東京都高等学校軽音楽連盟 委員長 成女高等学校 LM-CLUB顧問

佐々木弘人

連盟の設立に携わり、現在委員長を務める。LM-CLUB(軽音楽部)では、すべてのパートの指導にあたり、作詞・作曲・アレンジ・音楽理論も教える。部の公式HPには活動の様子や大会での成績が掲載されているほか、200曲近くにのぼる歴代のオリジナル曲が紹介され、一部試聴もできる。http://lm-club.com/

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