東京都軽音連の軌跡 第14回

高等学校における軽音楽活動の健全な向上発展と、加盟校が相互の親睦を図ることを目的に2007年の11月に発足。2009年には、東京都高等学校文化連盟に軽音楽部門として認可を受ける。現在、加盟校数は116校、所属部員数は約5,800名を数える大きな組織へと発展。生徒たちが演奏技術や芸術性を競うことはもとより、マナーやルールを守ること、親睦を深めることなど、学校教育の一環としての軽音楽活動の推進に主眼を置いている。活動内容、加盟校、沿革などは連盟公式ホームページに掲載。

http://www.tokyo-keion.com/


先日、秋の公式大会(東京都高等学校文化祭軽音楽部門大会/東京都高等学校対抗バンドフェスティバル)が終了しました。この大会は、2年生以下の1バンドが学校を代表してエントリーする「学校対抗」の新人戦です。地区大会(予選)を勝ち抜いた24バンドが中央大会(決勝戦)に出場しました。決勝戦では、審査員の先生から「高校生の軽音の大会とは思えない空気感で、一般の音楽コンテストを見るような目で審査しました」とのコメントをいただくほどレベルの高い演奏が繰り広げられました。上位入賞バンドは、来年の夏に長野県で開催される「第42回全国高等学校総合文化祭(2018信州総文祭)」の出場権を得ます。このように現在、秋の都大会は全国総文祭につながり、前号でご紹介した「全国高等学校軽音楽コンテスト」には、夏の都大会から代表が選ばれるという流れができました。全国総文祭の部門大会が毎年のように開かれるには、まだまだ年月がかかりそうですが、全国規模の大会を頂点とした発表の場が確立していくことは、大変喜ばしいことです。東京都の連盟に加盟する生徒たちの多くが、これらの大会を目標に日々練習に励んでいます。

さて前号では、軽音楽部の指導の難しさについて書きましたが、今回は、生徒にとって軽音楽部の活動がいかに大変かを、教育的意義を交えて考えてみたいと思います。

大会での演奏後のインタビューで、「入学時からずっとこのメンバーでがんばってきました」という言葉をよく耳にします。その度に「長い間一緒にやってきただけあって、さすがに息の合った演奏ができているな」と思う一方、「どれだけの困難を、この子たちは乗り越えてきたのだろう?」とか、「顧問の先生も、ここまで育てるには大変だったろうな」と感じます。前回も書きましたが、バンドという一つのチームは、生徒たちの自発的な意思と行動で作られ、一つひとつが独立した個を持っています。そのチームワークを維持していくためには、生徒たち自身が大変な努力をしなければなりません。多くの場合、彼らは自分の希望とバンド内での役割やバンドの個性とのギャップに悩んだり、なんとか整合性を見つけたりしながら活動しています。そのような環境がスタートの時点から軽音楽部の生徒たちには与えられ、彼らは常に自ら考え、主体的に行動しなければならないのです。

具体的には、少なくとも次のようなことがバンド活動をする上で求められます。まずバンドを組む際に、好きなジャンルや憧れのアーティストについて価値観を共有できる仲間の存在が欠かせません。一方、メンバーの担当楽器は各パートにうまく分かれている必要があります。また、メンバー同士気が合うことはもちろん、めざす方向や目標などについても考えを1つにしていることが大切です。そして何より、メンバーの演奏技術がある程度一定でないと満足のいく活動は望めません。さらに活動に使える時間や、保護者の理解度なども、円滑に活動するための要素となります。

しかしながら実際にこれらの要件をすべて満たしているバンドはほとんどなく、生徒たちは皆、何かを我慢したりどこかで折り合いをつけて活動を続けています。バンド内でぶつかることがあるのは当たり前で、自分とは違う感性を持つ仲間たちを受け入れ、理想と現実とのはざまで葛藤しながら、日々活動をしなければならないのです。

バンド活動は一見派手で楽しそうな活動に見えますが、実際はこれだけ多くのことを乗り越えていかないと継続できない、地道な努力を要する活動です。だからこそ、学校の部活として行う軽音楽活動には、教育的意義があるのです。部員たちは問題を解決したり、対処する力を身に付けていくだけではなく、自分にはなかった価値観を持てるようになったり、新たな考えや発想を生み出すことができるようになるなど、活動を通して多くのことを学び、自らを成長させているのです。

現在教育界では、「21世紀型の新しい学力」と呼ばれる「思考力・判断力・表現力」の育成が叫ばれるようになりました。そして新しい時代を生き抜いていくには、「主体性・多様性・協働性」を身に付けることが欠かせないとされています。一方、軽音楽部の活動に目を向けると、これらの力を身に付ける教育は、ずっと以前から行われていると言えます。軽音楽部で頑張っている生徒たちは、日々の「アクティブラーニング」を通して、「新しい学力」を身に付ける取り組みを、部活動を通して行っているのです。

学校教育における軽音楽活動への理解度は、まだまだ高いとは言えません。しかしながら、われわれが行っている活動は、旧態依然とした教育ではなく、まさしくこれからの時代で活躍できるための力を養う教育であると言えるでしょう。

東京の連盟活動の骨子である「学校教育の一環としての軽音楽活動」が、実態を伴いながら、ますます周知されていくことを願ってやみません。

部員たちは、日々の活動を通して「21世紀型の新しい学力」を着実に養っている


東京都高等学校軽音楽連盟 委員長 成女高等学校 LM-CLUB顧問

佐々木弘人

連盟の設立に携わり、現在委員長を務める。LM-CLUB(軽音楽部)では、すべてのパートの指導にあたり、作詞・作曲・アレンジ・音楽理論も教える。部の公式HPには活動の様子や大会での成績が掲載されているほか、200曲近くにのぼる歴代のオリジナル曲が紹介され、一部試聴もできる。http://lm-club.com/

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