東京都軽音連の軌跡 第13回

高等学校における軽音楽活動の健全な向上発展と、加盟校が相互の親睦を図ることを目的に2007年の11月に発足。2009年には、東京都高等学校文化連盟に軽音楽部門として認可を受ける。現在、加盟校数は116校、所属部員数は約5,800名を数える大きな組織へと発展。生徒たちが演奏技術や芸術性を競うことはもとより、マナーやルールを守ること、親睦を深めることなど、学校教育の一環としての軽音楽活動の推進に主眼を置いている。活動内容、加盟校、沿革などは連盟公式ホームページに掲載。

http://www.tokyo-keion.com/


8月のお盆明けに、第5回 全国高等学校軽音楽コンテストを開催しました。昨年度もこの誌面で大会の様子をお伝えしましたが、今大会についてもご紹介したいと思います。

今年度は、16の都府県から28の代表バンドが出場しました。会場はパルテノン多摩大ホール(キャパ約1400名)。土曜日ということもあり、用意した大会のパンフレットが早い時間になくなってしまうほど盛況でした。全国コンテストの出場者のレベルは年々めざましく向上してきていますが、今年は特に甲乙つけ難い、見ごたえのあるバンドばかりでした。前号で、都大会のレベルが飛躍的に上がり、予選からハイレベルな争いとなっていることをお伝えしましたが、他府県においてもこのような傾向があるのではと感じています。以前はリハーサルの際に、もたついてしまうバンドや、ステージでのマナーが良いとは言えないバンドも見られましたが、今年はどのバンドもとてもきちんとしていました。各都道府県での連盟活動が充実し、マナー面での指導も行き届いてきていることや、全国コンテストの趣旨を理解して出場していることの証ではないかと思っています。取材や見学に来られた外部の関係者からも大変好評でした。特に、「出場者一人ひとりが、この大会を目指して一生懸命やってきたことが伝わってきました。」という言葉を多くの方からいただき、主催者としてはとても嬉しく思いました。

この大会は、各都道府県の顧問の先生方が、互いに情報交換をする貴重な場でもあります。出場校の顧問や連盟を代表してお越しくださった役員の先生方のお話を伺うと、地域によって軽音楽活動の在り方に違いがあることや、音楽の文化的な面においても違いがあることがわかり、大変興味深いです。また、軽音楽部での指導や連盟運営でのご苦労を知ることができると共に、この大会への期待感がひしひしと伝わってきます。特に、軽音楽活動に対して理解を得るのが難しい学校や、昔のイメージが強く残っている地域で尽力されている先生方は、軽音楽部の教育的な活動の広がりに大きな期待を寄せていらっしゃるように感じます。これからも本大会が、その一助となるべく、さらに努力していきたいと思っています。

なお、今年度の全国コンテストにおいて、ミュージックネットワーク社には、パンフレットの制作のみならず、会場・音響・照明などにおいて多大なるご協力を頂戴しました。誌面をお借りして心より御礼申し上げます。

さて今回は、軽音楽部での指導について書きたいと思います。私は20数年来、自校の軽音楽部(LM-CLUB)の指導にあたり、東京都の連盟には発足から10年以上役員として携わっていますが、この間、軽音楽以外の部活動や他の連盟の活動を学ばせていただく機会にも恵まれました。言うまでもなく、熱心な顧問の先生が指導されている部は、運動系、文化系を問わず、大変充実した活動をしています。また、連盟や大会などの運営をされている役員の先生方が、プライベートの時間も割いてご尽力されていることは共通と言えます。

しかし、部をまとめ教育的な活動を行っていくという点において、数ある部活動の中でも、軽音楽部は最も指導が大変な部の1つであると感じています。もともとロックをはじめとする軽音楽は前衛的な文化であり、教育とは相反する歴史を持ちます。現在も生徒の指向性においてその傾向は見られますし、周囲の眼差しもほかの部活動とは異なるものがあります。芸能活動に近いジャンルであることも、何かと指導上の問題につながりますし、そもそも活動中に出る大きな音は、学習環境には馴染みません。

また、軽音楽は団体種目でもあり、個人種目でもあります。1つの部にチーム(バンド)が複数あって、すべてのバンドに満足のいく活動をさせることは簡単ではありません。監督の采配で補欠を充当しながら、1チームをまとめる団体競技とは違う側面を持ちます。そして多くの場合、各バンドは生徒たちの自発的な意思と行動で作られ、それぞれが独立した「個」を持っています。バンド内のチームワークを維持していくためには、生徒たち自身の考え方や努力が大きなウエイトを占めるため、教員の粘り強い指導がないと、時として簡単に崩壊してしまいます。一人ひとりの希望進路や家庭環境などよって、バンド全体の活動が大きく影響されることも、指導が難しいところと言えるでしょう。さらに技術指導においても、軽音楽部では様々な楽器を扱うだけでなく、アンサンブル、音響や照明、作詞・作曲・アレンジなど多岐にわたる知識が求められるため、個々の技術指導を顧問がすべて担えるケースは少ないのではないでしょうか。

このように指導が難しい軽音楽部をまとめ、労を惜しまず奮闘されている先生が、こんなにもたくさんいらっしゃるのかと、連盟の立ち上げの際に驚いたことを覚えています。

ところで、生徒たちにとっても、軽音楽部で活躍するというのは大変なことです。現在教育界では、「新しい学力」を身に付けるべく「アクティブ・ラーニング」の有効性が叫ばれていますが、軽音楽部員はバンド活動を通して、日々「アクティブ・ラーニング」を行い、社会で求められる様々な力を身につけています。

次回は、生徒の側に焦点を当てて、教育活動の一環としての軽音楽部の活動について、考えていきたいと思います。

全国コンテストは、各都道府県で尽力されている顧問の先生方が、互いに情報交換を行う場でもある


東京都高等学校軽音楽連盟 委員長 成女高等学校 LM-CLUB顧問

佐々木弘人

連盟の設立に携わり、現在委員長を務める。LM-CLUB(軽音楽部)では、すべてのパートの指導にあたり、作詞・作曲・アレンジ・音楽理論も教える。部の公式HPには活動の様子や大会での成績が掲載されているほか、200曲近くにのぼる歴代のオリジナル曲が紹介され、一部試聴もできる。http://lm-club.com/

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