東京都軽音連の軌跡 第11回

高等学校における軽音楽活動の健全な向上発展と、加盟校が相互の親睦を図ることを目的に2007年の11月に発足。2009年には、東京都高等学校文化連盟に軽音楽部門として認可を受ける。現在、加盟校数は116校、所属部員数は約5,800名を数える大きな組織へと発展。生徒たちが演奏技術や芸術性を競うことはもとより、マナーやルールを守ること、親睦を深めることなど、学校教育の一環としての軽音楽活動の推進に主眼を置いている。活動内容、加盟校、沿革などは連盟公式ホームページに掲載。

http://www.tokyo-keion.com/


前号では、企業や専門学校などの団体が、「教育活動の一環」という連盟の理念に賛同して、協力してくださっていることをご紹介しました。今回は、外部団体との関わりにおいて、発足当初から気を付けていたことや現在連盟が直面している問題、そして今後懸念されることについて書きます。

連盟の立ち上げを検討している頃に、有志で集まった顧問の間で話題になったのが、部活動と芸能活動との関係についてです。「連盟の大会で育った生徒たちが、将来プロデビューする日がくるかも」とか、「『〇〇(ミュージシャン)を輩出した』という冠がつく部が、加盟校の中から新たに現れるかも」のような話が、連盟活動が軌道に乗った証として夢のように語られていました。しかし一方で、プロミュージシャンの育成や輩出を直接的な目標にすると、高校の教育活動から乖離していくことも、先生方は気付いていました。

少し横道にそれますが、学校教育の現場では、「ミュージシャンを目指しちゃいけないんですか?」という生徒の問いに、明確に回答できないケースが多くあります。夢やあこがれだけで「ミュージシャンになりたい」と言い、現実の厳しさを伝えても「なんとかなる」と思ってしまう生徒が少なくないからです。また大会で賞をとったりすると、「勘違い」してしまう生徒も現れます。それを指摘すると、自分を客観的に見ることができない生徒ほど「大人たちはいつも、『夢をあきらめるな』と言うくせに」となるのです。

連盟に話を戻しますが、我々は「部活動は人間形成の場でありプロを輩出するための場ではない」という明確な理念を打ち出して連盟を発足しました。加盟校部員が、部活動を通して充実した高校生活を送り人間形成を計る、その一助となることを連盟活動の目的としたのです(もちろんミュージシャンをめざすことを否定するものではありません)。

そのための具体的な取り組みとして、我々は民間で行われている大会とは一線を画す大会作りをしています。連盟主催の大会では、芸能活動へのスカウトや音楽学校などの生徒募集(勧誘)は、一切お断りしています。また、生徒の肖像権や個人情報について、慎重な姿勢で臨み、大会は公開型ではなく、保護者、教員、友達など関係者に観覧いただくという立場を取っています。

また、大会のレギュレーションについては、連載の第7回から3号にわたって詳しくご紹介したとおり、教育的な観点からの決め事が多く、参加する側からすれば堅苦しく感じることもあるかも知れません。第1回大会を企画している当初、「先生たちが企画・運営する大会が、生徒たちの目標となる魅力的な大会に発展していくのだろうか」と心配しました。しかし「教育的であること」が、むしろ多くの顧問の先生方の共感を得て、ここまで発展したと考えています。現在では、「どの民間大会で入賞するより、連盟の大会で賞をとることの方がはるかに重みがある」という考えが加盟校の間で定着しています。

このような理念をもって連盟は活動をし、大会も回を重ねてきましたが、一方で、高校生の軽音楽活動の盛り上がりをビジネスにつなげようという動きも多くなったように感じます。「教育的な活動の支援」ではなく、ビジネスのための市場という概念でのみとらえ、生徒たちに近づいてくる団体もあるようです。

例えば、連盟の大会に無断で視察にきて、自社が企画するライブの出演者を募ったり、デビュー人材の発掘の場にするなど、生徒がビジネスの商品のように捉えられてしまうことが起きています。また、大会の入賞バンドに声をかけて出場(出演)依頼をし、「都大会入賞バンド」のような冠をつけて紹介して、他の出場者やお客さんを集めているようなライブも見受けられます。民間の団体が行っていることに対して、連盟が何かを申し立てる立場にはありませんが、我々が目指している教育活動に相反するところで、連盟が間接的にでも関与する事実があれば、連盟活動の意義自体が問われることになりかねません。

以上のように、軽音楽部の活動や連盟活動の発展に伴って、連盟として対応しなければならない問題や留意すべきことも増えてきています。活動に協力いただいている団体とは、共に発展していく姿勢を大切にしていますが、教育活動から逸れてしまったり、教育活動としてふさわしくない状況につながると判断できる場合は、支援をお断りすることもあります。また連盟と直接関係のない団体の活動であっても、加盟校生徒を巻き込む形で展開されている企画や活動については、連盟は毅然とした姿勢で臨まなければならないと考えています。

ところで、毎年連盟総会において、活動の趣旨や連盟の姿勢を加盟校顧問の皆さまにお伝えしていますが、今年度、初めて総会に出席された新しい顧問の先生から、「こんなに真面目にやっているんですね。軽音楽部の活動が教育的になされていることを知って安心しました」という声を聞きました。これまでの活動の成果を感じて嬉しく思うと共に、各校の先生方や外部の方々に、我々の活動を周知していくことが大切であると改めて思ったところです。

連盟の大会は、あくまで教育活動の一環として開催されており、プロへの登竜門でもスカウトの場でもない


東京都高等学校軽音楽連盟 委員長 成女高等学校 LM-CLUB顧問

佐々木弘人

連盟の設立に携わり、現在委員長を務める。LM-CLUB(軽音楽部)では、すべてのパートの指導にあたり、作詞・作曲・アレンジ・音楽理論も教える。部の公式HPには活動の様子や大会での成績が掲載されているほか、200曲近くにのぼる歴代のオリジナル曲が紹介され、一部試聴もできる。http://lm-club.com/

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