顧問はかく語りき – 柏木学園高等学校 軽音楽部顧問 三部 哲先生 佐藤宏拓穣先生

神奈川県のほぼ中央に位置する大和市にある柏木学園高等学校の軽音楽部は、剣道の精神でつながる三部(みつべ)先生と佐藤先生のコンビによって、「部活動による生徒指導」が軽音楽部で実践されています。その運営方法は、1本の綺麗な太刀筋のようにブレがなく明快で、なんとも「気持ちの良い」お話を聞くことができました。

人、物、場所に感謝の気持ちを

ー どのような経緯でお2人は軽音楽部の顧問になられたのですか?

三部▶︎私は10年ほど前に入試広報部から担任に戻ったので、顧問を引き継ぎました。それまで剣道やラグビーなど、体を動かす方が好きで、楽器や音楽の経験がなかったものですから、新堀ギターに通ってギターとベースを習いました(笑)。軽音楽部は、当時かなり自由な感じだったのですが、部活動は教育の一環ですから、まず服装や言葉使い、頭髪、挨拶、時間厳守など、基本的なことを改めさせました。

ー 反発はありませんでしたか?

三部▶︎ありましたよ(笑)。少し急激な変化でしたが、まずは制度として整えないといけないと思っていました。新入生が入ってきた時に、上級生と分けて指導するようにしたんです。その後、その新入生たちが基礎を引き継いでいってくれました。そこからですかね、本当の意味で軽音楽部が始まったのは。

佐藤▶私も同じ入試広報部にいて、当時は剣道部の顧問をしていたのですが、三部先生の姿を見て大変そうだったので、「よし!」ってこっちにきました。私も音楽の経験はありませんでしたが、部活動のあり方について剣道から学んできているものが非常に多かったので、何か新しいものを作ろうとしている三部先生と共に、「礼に始まり礼に終わる」といったことを軽音楽部に導入したいという思いでした。

ー 全国の高校の中には、部室の出入りの時に挨拶する高校もあります。道場なら当たり前ですよね。グランドもそうです。

佐藤▶︎やはり、「場」に感謝する気持ちは大事です。機材や道具、楽器を大事にしようという考えも三部先生と一緒で、そう生徒に指導しています。人に感謝して、物に感謝して、場所にも感謝しなさいと言っています。
ー 素晴らしい。そういった、部活動としての指導をされる先生方が増えて欲しいです。

三部▶︎音楽の経験がない、ということが逆に強みなのかもしれませんね。音楽の基本的なことは知っとかないといけないなと思ってギターとベースを習いに行きましたが、指導は上級生が行なえば良い。部活動なら当たり前のことです。

剣道的発想をしてしまいます

ー 軽音楽部の学校での地位や評判は?

三部▶︎校内の地位は微妙ですね。音もうるさいし(笑)。生徒からは、規律が厳しいので疎まがられているかもしれません。

佐藤▶︎運動部と比べても、挨拶は軽音楽部の方がしっかりしていると思います。あと、これも剣道の「朝稽古」からの発想なんですが、本校では毎朝「朝練」をしています。大会があった翌日も、朝から「朝稽古」です(笑)。30分ぐらい基礎練をしているだけですけど。

ー すごいですね。昼はないんですか?

佐藤▶︎昼休みはランチ・ミーティングをしています。バンドごとに集まって、放課後の練習について話し合っています。軽音楽部は文化部ですが、やっていることは運動部と変わらない部分もあるので、ちょっと剣道部的発想をしてしまいます。例えば、神奈川県は合同演奏会が多いのですが、これは「出稽古」ですね。人の演奏を聴いて、見て、学ぶ場です。我々も、いろいろな合同演奏会に参加して、たくさんのことを学びました。以前、東京の第一商業高校とご一緒した時に、当時の顧問は片桐先生でしたが、挨拶や規律もしっかりとしていて、「あぁ、全国でトップを目指す学校は、やはりそうなんだな」と思いました。運動部は目標の1つに必ず「大会」がありますので、これは軽音楽部でもできるなと思いました。

ー そうやって作ってこられた伝統が、先輩から後輩に引き継がれていくと良いですね。

佐藤▶︎神奈川県はレベルが高いので、そこを勝ち抜いていったら生徒たちにも達成感が生まれると思います。「音楽は優劣をつけるもんじゃない」という意見もありますが、大会があって優劣をつけている以上、大きな目標の1つです。大会などで良い成績を残すことで、軽音楽部の地位や見方も変わっていくんじゃないかな、とも思います。そういった意味でも、生徒の頑張りが報われる部活動にしていきたいです。

ー 他の部活動と同じように、内申書に書けるようになって欲しいですね。

三部▶︎本校は、逆に「書けるよ!」って言っています。何の大会に出て、どうなったか。内申書や推薦書に書けることだからこそ、生徒たちも自信を持てるんだと思います。社会的に認められていることなんだと。

佐藤▶︎以前、剣道でつながりのあった横田基地のエレメンタリー・スクールで演奏させてもらった時に、英語で「アナと雪の女王」を生徒が歌ったら、子供たちにウケたんです。そうしたら、まったく英語が好きじゃなかったその生徒が突然英語が好きになっちゃって(笑)。その後、英検をとったりしてたんで嬉しかったですね。軽音楽部にはそんな効果もあるんだなぁと思いました。

部活動は人材育成の場です

ー 顧問として、大事にされていることは?

三部▶︎生徒には社会に出て通用する人間になって欲しいと思っています。高校時代は、言いようによっては守られた「ぬるま湯」ですから、部活動で厳しくしてあげることで、社会の荒波にもまれても、負けない人材育成ができるのだと思っています。
ー 同感です。テクニック重視ではいけません。

三部▶︎プロを目指しているわけではなく、部活動ですからね。そっちの「人材」じゃありませんから(笑)。

佐藤▶︎例えば、社会に出て、時間を守ることや礼儀ってやっぱり重要じゃないですか。あるいは、部活動をする中でいろいろな問題が出ると思うんですけど、それを解決していく力も身につけて欲しいです。

三部▶︎まさに、「礼に始まり礼に終わる」です。それができるように指導します。

ー 基本的生活習慣を身につけさせるというのは、大変なことと思うんです。保護者に対しても様々あるでしょうし。それを言えちゃう強さってどこからきているのでしょうか。やはり剣道(笑)。

佐藤▶︎私の場合は、まさにそうかもしれません。柱になっているのは確かですね。

三部▶︎我々には目標とする人材像があるので、それを目標としてくれないのであれば、何故「礼儀」が大切かをわかるまで指導します。

佐藤▶︎本校では、入学・入部してすぐのゴールデン・ウィークに発表会をさせるんです。それが終わったら、もうオリジナル作りです。

三部▶︎新入生は音楽の嗜好性でバンドを組ませ、それぞれに好きな曲をやらせます。1つのバンドに1つの先輩バンドをつけて指導させて、ゴールデン・ウィークあたりに保護者を集めて発表会です。最初に「できた」気にさせるんです。

佐藤▶︎もちろん、1コーラスだけとかでも良いんです。やることが大事だし、そこで先輩後輩の関係性も築けますから。でも、今年はフル・コーラスやってましたね。

ー すごい。2~3週間でできるもんですか?

三部▶︎いつまでもズルズルとわけのわからない練習をしているよりも、目標を与えてやればやりますよ。長期的な目標と短期的な目標の両方を設定してあげることが大事で、ここまでにこれをやろう、ここまでにこれをやろう…。で、その先に大会があるわけです。

佐藤▶︎今年も 1 年生は全員夏の大会に出ます。 神奈川県はオリジナル曲文化ですので、1 年生 でオリジナル曲を作って大会に出させています。三部▶︎そんな感じで、演奏も曲作りも特に何も教えてもらわないうちにやるので、皆んな個性的なんです。それも大事な人材育成だと思います。大会の審査員の方は困っていらっしゃいますけどね(笑)。

大会の審査基準の統一を

ー 大会の審査基準統一も今後のテーマです。

佐藤▶︎そうですね。審査のポイントや点数のつけ方が曖昧だったり、コメントと点数が一致していなかったりすると、その後どうやって指導して良いのかわからなくなってしまいます。

三部▶︎審査員の選抜や、部活動としての審査をしてもらうようにしていくことも大切ですね。今は、審査ポイントになっているところと、実際に審査されているところが違ったりすると後日、専門家にアドバイスをもらいに行くようにしています。
ー エンターテイメント的な見方をしてしまうと、少しズレちゃうことがありますね。

佐藤▶︎軽音協が先日の総会で、審査基準の統一を提案しておられましたが、本当にその通りだと思います。運動部では当たり前ですからね。

三部▶︎主観で審査されると、困っちゃうんですよね。運動部のように、顧問が審判講習を受けて資格を持つことが理想です。難しいと思いますが、それが普段の指導にも反映され、都市と地方との公平性や均一性にもつながっていくのではないかと思います。

ー 軽音協では、未完成ですが、審査基準のガイドラインを作りました。その次には皆さんの意見を聞きながら、審査員資格のガイドラインをまとめていければと思っています。

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