学校に来づらくなっている生徒が登校するきっかけになるような部活動にしたい

残暑もコロナも少し落ち着いたかな、と思われる9月の初旬。入れ替えでやってくる台風への備えも行いながら、来たるべく文化祭や体験入学での演奏を控えて大変お忙しい中、石川県の軽音楽部にとってはまさに夏の嵐のような存在の長出先生に、リモート画面では納まらない様々なことについてお聞きしました。(2020/10/顧問通信VOL.32掲載)

学校に来づらくなっている生徒が登校するきっかけになるような部活動にしたい

【石川県】金沢学院高等学校 軽音楽部 顧問 長出泰典

文化祭でおしまいでは寂しかった

ー まずは、軽音楽部の顧問になられた経緯からお聞きしたいと思います。

実は、ずっと運動部の顧問と掛け持ちなんですが、軽音楽部が正式な部活動として認められて今年で11年目になります。その前の同好会だった時代が2年、さらにその前のカオス状態だった(笑)1年間を含めると、下地作りに3年ほどかかりましたが、無事に出港できたのが11年前です。

ー 立ち上げから関わっておられるんですね。

当校に赴任した1年目が生徒会担当で、毎年9月に行われる文化祭の仕事も担当することになりました。委員会で生徒からバンド演奏をしたいという発案があって、私が音楽をやっていたものですから、上司から「間に入ってやってくれ」と言われました。それで、ドラムは何を揃えたら良いかとか、アンプはどんなものを借りたら良いかとかの相談に乗ってあげたのがきっかけかもしれません。

ー そこから火がついて同好会へと。

当校では、特進コースが隔週の土曜日に授業をやっていまして、土曜日に部活動がない生徒を何とか学校に来させようというプロジェクトが当時あったんです。そこで私が手を挙げて、午前中に3時間ぐらい「ギター・クリニック」のようなことをしたいと提案しました。文化祭が終わって「はい、おしまい」では寂しかったので…。それが次の段階につながったんだと思います。潮の流れが変わったというか、追い風になったんじゃないでしょうか。

「楽器が弾けるなら」と学校に来る

ー 順風満帆な出港ですね。

いやいや、波には乗れましたが逆風は常に吹いていましたよ(笑)。正式な「部」ではないので活動場所もなく、自分の教室を放課後に解放して練習したりしていました。本当に「同好会」って感じでしたね。「ちょっと面白そうだ」くらいで参加している生徒もいましたし。

ー 同好会らしい楽しい雰囲気ですね。

当時はまだいわゆる素行が悪い生徒もいて、そんな生徒にも「土曜日はギター担いで学校来いよー」なんて言ったりすると、意外と素直に来るんですよね。一番嬉しかったのは、ちょっと気持ちが弱くて学校に満足に通えていなかったり、心のトラブルとかがあって学校に足が向かなくなってしまっていた生徒が、「楽器が弾けるなら」ということで顔を出すようになったことですね。

ー その頃の部員は何人いたんですか?

1年目はちゃんと活動できる生徒だけを入部させたので、土曜日のギター・クリニックに参加していた3年生が2人、2年生が1人、1年生が3人の合計6人でした。周りの方の協力で機材などを何とか揃えて、学校に怒られながらも空き教室で練習したりしていました。今では考えられないですけど、当時は遅い時間まで部活動をやっていたこともあります。地方ならではかもしれませんが、遅くなる時は保護者に連絡して生徒を車で送ったりしていました。やはり、学校と家とでは態度が違うんでしょうね。子供が何かに打ち込んでいることがわかって感謝されることも多かったです。かなりマンパワーでやっていましたが、20代後半だったからできたことかもしれません。当校には部活動に昇格するには「部員が10人以上いること」という規約があるので、2年間は何とか部員を10名以上集めて、次の年(2010年)に部活動に昇格することができました。

学校からの評価は生徒のおかげ

ー10年でこれだけ学校に認められる部活動になるのは、とても早いと感じるのですが。

そうですね、早いと思います。でも苦労の多い10年だったとも言えます。顧問通信に掲載されている先生方のお話を読むと、本当に共感することばかりです。でも、学校からの評価は間違いなく生徒のおかげだと思っています。例えば、文化祭の催しの中でも軽音楽部は延べ250人から300人ぐらい集客があったり、体験入学の時に軽音楽部に体験入部してくれる人が多くなってきたことが、だんだん学校側の見方も変わってきた要因だと思います。

ー 現在の部員は何名ですか?

2年生が8人、1年生が12人です。3年生が5人いるのですが、今はセミ・リタイヤ中なので部活動に出てきていません。春に受験を控えている生徒は別ですが、数名は上級校への内定がそろそろ出るので、1年生の指導に戻って来てくれると思います。でも、例年でさえ1年生と3年生は4月から6月までの3ヶ月ほどしか顔を合わせないので、あまり交流がなかったりするのですが、今年はコロナ禍でさらに付き合いは薄くなりましたね。たぶん顔も名前もお互いにわからない、という状態じゃないでしょうか。

ー 本当に大変な年になりました。

今年度はどうなるかわかりませんが、そんな3年生にはご褒美で毎年2月に「卒業ライブ」を長出プレゼンツでやってあげているんです。毎年なのでバレバレなんですが、花束や寄せ書きの色紙を贈呈したり、芸術デザインコースの部員が消耗品を使って手作りのプレゼントを贈ったりしています。去年は割れたシンバルの破片を使ってペンダントを作ってましたね。

合奏練習がサンドイッチされてます

ー 普段はどんな活動をされていますか?

基本的に毎日3時間ほど練習時間があるのですが、最初の1時間は特進クラスがまだ授業をやっているので、参加できる部員はウォーミング・アップをしたり、パート練習や個人練習をしています。で、次の1時間が合奏練習です。移動が少ないドラム部屋に集まって行っています。部室には電子ドラムがあるので、まだ大きな音に慣れていない1年生が主に使っています。以前は合奏練習を最後にやって、片付けて終礼という流れだったのですが、合奏練習が終わってからもそれぞれが確認とかをしたいというリクエストがあって、今では最後の1時間がまた個人の練習時間になっています。合奏練習がサンドイッチされている感じです。

ー ミーティングはされていますか?

はい。終礼は毎日行っていて、翌日、来週、来月の確認などをしていますが、今はコロナの関係でミーティングへの参加を強制できないので、全員参加というわけではありません。でも、LINEグループを作ったり様々な方法で連絡が行き届くようにしています。

ー 他に、コロナ感染防止対策はどんなことをされていますか?

当校では、部活動前に手を洗ったかとか、終礼前に手を洗ったかといったことをチェックするシートがありまして、それに毎日記入しています。そうそう、某楽器メーカーから発売されているハイハット・スタンドを改良した「足踏み式消毒液ポンプ」があるじゃないですか。あれを美術部の協力も得てGW前から自作して導入したんです。結構評判が良くて、部活動が再開するまでは職員室や玄関、保護者懇談会の時のホール入り口などに置いておきました。あとは、演奏中はもともと必ずマスク着用なんですが、マイクには風防カバーをかぶせて、さらにブーム式のマイク・スタンドを使って自作した透明シートを立ててやらせています。もちろん、終礼後にはみんなで使った教室を細かく消毒スプレーをかけて拭くといった除菌作業もしています。全部で30分ぐらいかかってしまいますが、そのぐらいやらないと軽音楽部は活動できないかなと思っています。「ちゃんとやってますよ」アピールにもなりますしね。

高校生の経験値を上げてあげたい

ー 近い目標は文化祭ですか?

来週の文化祭では、2年生と3年生が演奏します。今年はまだ1年生がライブ・デビューできていないんですが、今月(9月)末に体験入学があるので、そこに来てくれた中学生の前で初めて演奏させようと考えてます。今はそれに向けてお尻を叩いている感じです。先日、他校さん…まだ同好会の手前な感じの学校さんの1年生バンドが堂々と3曲ぐらい演奏している映像を見て、闘志がメラメラと湧いてきているみたいです(笑)。うまくいっても失敗しても成長するきっかけになりますので頑張って欲しいです。大きな目標の1つとしては、自分たちでオリジナル曲を作ろうなって言っています。

ー 石川県全体の動きはいかがですか?

石川県高文連の音楽専門部には、合唱、郷土芸能(和太鼓)、ハンドベル、室弦楽という部門があるんですが、そこに軽音楽部門を加えてもらいました。現在、軽音楽部門に加わっている学校は6校ですが、他にまだ同好会レベルの学校もいくつかあるので、今後部活動に昇格して参加してくれたら嬉しいなと思っています。昨年は、2日間行われた音楽専門部の合同音楽会の2日目に、軽音楽部門だけでクリニックや演奏会を自前企画ですけれども行いました。今後、音楽専門部から暖簾分けしてもらって、軽音楽専門部を立ち上げたい気持ちはあります。しかし、それには他県の皆さんからのアドバイスに従って、一緒にやっていただける「仲間」を増やしていくことが大事だと思っています。軽音楽部の熱は高まって来ていると感じているので、活動が活発になってきている学校の先生たちと連絡を取り合って頑張っていきたいと思います。コロナが収まれば、当校での合同演奏会にお誘いしたいですね。

ー 最後に、どんな思いで顧問をされているかをお聞きしたいと思います。

メンタル的に学校に来づらくなっている生徒が登校するきっかけになって欲しくて軽音楽部を始めました。もちろん、礼儀やコミュニケーション能力など、社会に出た時のために身につけて欲しいこともたくさんありますが、部活動を通して高校生としての経験値を上げてあげたいと思っています。その気持ちは軽音楽部を立ち上げた時から変わっていません。実際に、中学の時は引きこもりだったという生徒が、3年次には皆勤で卒業していった、なんてことも多いんです。運動部は身体的な発散になるかと思うのですが、文化部は内に溜まっている心のモヤモヤをガス抜きできると思うんです。軽音楽部で、自分という存在が良い方向に変わってくれたら良いなと思います。

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