軽音楽部 〜現在から未来へ感じていること〜

自校の取り組みや活動理念、事例発表などを軽音楽部の顧問の先生からの投稿やインタビューにて紹介します。(2020/5/顧問通信 VOL.29掲載)

音楽部 〜現在から未来へ感じていること〜

【静岡県】静岡県高等学校文化連盟軽音楽専門部 専門部長/静岡県立静岡西高等学校 音楽部 顧問 小澤知彦

軽音楽部の地位向上を目指そう!

今回の寄稿で、私は「軽音楽も学校部活動の1つであるべき」との視点から意見を述べさせてもらいます。その根底には、私や心ある部員たちが今日まで軽音楽部の地位向上のために努力してきた、との自負があるからです。その実践の1つが、高等学校軽音楽部の公的な組織化です。つまり、高等学校文化連盟(以下、高文連)の中に軽音楽専門部を設置してもらうことです。御存知のように、高等学校軽音楽連盟は任意組織であり、高文連から正規に認められた公的な組織ではありません。確かに、学校間の交流、連盟主催の講習会や大会の開催も可能です。他の専門部と比べても遜色ない運営が行われている地域もあります。それらは目標とすべきであり、教育活動として切磋琢磨の場を提供できていると敬服しております。

それでは、なぜ軽音楽部の地位向上が思うように図れていないのでしょうか。私は、その要因の中に、軽音楽部に携わる人たちの先入観や勘違いが挙げられると思います。「軽音楽部は◯◯だから」「軽音楽部には△△が許される」…。この特殊性の容認や自己都合の意識が、実は他者からの顰蹙を買うことになっている、ということです。その最たるものが、バンド単独でのライブハウス活動だと考えています。部活動を名乗りながら、顧問教師が不在の形で個々のバンドが校外のバンドと同じステージに立ち、そのための費用も自助努力で賄なっている。さらには、顧問や正規のコーチ以外の人間がバンドに対して直接コンタクトを取り、関係性を持とうとする。このような行為が他の部で容認されるはずがありません。加えて、連盟組織の中にも教員以外の人間が入っており、連盟を名乗った言動を行って憚らない例もあると聞きます。もしこのような状況を所属校の管理職や高文連の上層部が知ったら、「軽音楽部は先進的で画期的な活動を展開していて素晴らしい」と評価してくれるでしょうか。

現状、学校部活動というカテゴリーの中では、高体連や高文連の専門部に位置づけられているか否かで、その立場が大きく左右されると思います。もちろん、軽音楽部を取り巻く状況は地域によって事情が異なりますし、実際に専門部設置への道筋が困難を極めることも承知しています。それでも私たちは軽音楽部の地位向上のために、「全国高等学校文化連盟軽音楽専門部」設置を目標とすべきだと思うのです。各県に専門部を設置→ブロック大会の開催→全国高文連に軽音楽専門部を設置→全国総文祭で規定部門として毎年度、大会を開催。こうなって初めて、部活動としての軽音楽部が正式に認知されるのではないでしょうか。

軽音楽部顧問は特別な存在ではない

軽音楽部が全国的に盛んになってきていることは、長年にわたり顧問を務める一人として、たいへん嬉しい状況です。とはいえ、校内でまだ十分な市民権を得られていない現実も直視しなくてはなりません。では、解決すべき問題点とはどのようなものでしょうか。ここでは、私なりの見解を述べさせていただきます。異論や反論のそしりは甘んじて受けたいと思います。

現在、軽音楽部の顧問の多くは若い頃からバンド活動に勤しみ、その楽しみややり甲斐を体感してきた人たちだと推察します。同時に、周囲からの疎外感や蔑視の視線に晒されてきた経験もあると推察します。教師になった現在、次世代の音楽愛好家たちに同様の辛い思いをさせたくないとの強い思いがあることは、その指導を受ける生徒たちにとって、とても心強くありがたいことです。また、生徒たちと、学習活動やHR活動以外の面で共通の話題を持ち、シンパシーを感じられることは、人としても嬉しいことです。さらに、そこに専門知識や技術指導が伴えば、鬼に金棒とも言えます。しかしながら、趣味の世界ではそれで完結しても良いでしょうが、こと教員という立場で生徒と接する上では、わきまえるべき点が自ずと生じてきます。

例えば、運動部顧問にはそのスポーツを得意として取り組んできた教師が顧問に就任する場合が多く、その専門性を生かして部の運営に多大なる力を発揮されていることでしょう。ただし、そのメリットや優位性はあくまでも指導者としての観点からであり、自らが生徒たちと同じ土俵に下りて、共にプレイヤーになることとは異なる次元の話だと思うのです。実際に自分でプレイを見せて、具体性のある理解を促すことは有効な指導だと考えています。ところが、バンドの場合は、その域を逸脱して、一緒にライブステージに立ってみたり、場合によっては自分が所属するバンドと生徒バンドが共演したりする話を耳にすると、「あなたの立場は何?」と聞きたくなります。かく言う私自身も、若い頃は同僚たちから「生徒たちと遊んで楽しそうだね」と皮肉を言われたことがありました。本人にその意識がなくても、周囲の目にはそう映るのでしょう。私は、そうした事例が相変わらず軽音楽部を学校部活動として特殊な位置に甘んじさせている可能性を否定できないと考えています。良き顧問教師は必ずしも優れたプレイヤーとイコールではない。私はそう考えています。

校外活動に潜むリスクと顧問としての危機管理

今回の新型コロナウイルス感染症へのリスクは、年度末を迎えて様々な行事を予定していた私たち軽音楽部にも大きな衝撃が走りました。例えば、部員たちが楽しみにしていた卒業ライブです。本校では、3年生の引退ライブ(卒業ライブ)だけは地元のライブハウスを貸し切り、部の予算から会場費を支出して、来場者無料のイベントを開催しています。御存知のように、ライブハウスを借りるには10万円以上の費用が発生します。私たちの場合は開催当月に入ってからのキャンセルだったので、ほぼ全額の料金を支払いました。もしこれが高校生たちが独自に主催するイベントだとしたら、どうなっていたでしょうか。恐らく主催者である高校生バンドは自分たちだけで会場費を工面できないので、共演するバンドたちを募り、彼らにも相応の負担を求めます。そして、出演バンドのメンバーたちは分担金をチケット化し、友人たちに販売することでペイしようとするでしょう。

今回のような非常事態下でも、そうした金銭に絡む事情から、自粛要請を振り切って実施に踏み切った高校生バンドたちもいたことが懸念されます。また、これ以外にも、ライブハウスで知り合った大人バンドとの不適切な上下関係の構築、部員個人へのアプローチ、果ては部員たちへの技術指導を理由とした部運営への介入など…。実は私自身も、生徒たちの校外活動を彼らの自主性に委ねることで発生する数々の問題を経験してきました。この年度末にも、部員バンドたちの校外活動を、彼らの自己責任と称して目を瞑る、或いは開催の打診すらされなかった顧問もいたのでは…と心配になります。ライブハウスでのクラスター感染発生のニュースを通して、私たち顧問教師は一見、自由闊達な高校軽音楽部の活動が予期せぬ事態へのリスクヘッジの点で非常に脆いものであることを真摯に受け止めるべきです。問題が生じた際には当然、顧問教師としての管理責任が問われることになります。たとえ顧問がライブイベント開催の事実を知らなかった、あるいは部員たちが学校名を伏せたり、バンド名を変えていたとしても、そこに部のバンドが関与していた事実が看過されることはないでしょう。普段は何事もなく行われているであろうライブイベントですが、実は校内やSNS上でのチケット販売の行為が生徒指導上の問題行為であること、深夜徘徊や飲酒喫煙の危惧があることなど、部顧問の管理責任問題に派生する可能性を自覚した上で、日頃から部員たちと対峙することを考えるべきです。軽音楽部の活動目的はインディーズバンドの輩出や部員たちにプロの真似事をさせることではないはずです。このような実情を鑑みて、私が部の規則として遵守させているのが、部内バンド単独でのライブハウスへの出演は禁止。掛け持ちバンドの禁止、というものです。

ここで、今回のコロナウイルス感染拡大を心配して、自ら卒業ライブの中止を決断した本校音楽部前部長が、休校中の全部員に対して送ったメッセージを掲載します。

【残念なお知らせ】3月4日(水):卒業ライブの件ですが、大阪市京橋のライブハウスでの感染者増加の報道を受けて、断腸の思いではありますが、中止としたいと思います。感染は、私たち若者は発症しなくても、私たちを介して、家族、特に、高齢者に感染してしまう危険性が高いそうです。後輩たちも、19日で登校休止が解除されるかどうかも定かではないし、私たち自身も新生活の門出の段階で躓く訳にはいきません。今回のことは、全世界的なパニックになりかねない状況と報じられています。3年間を共にした仲間たちとのフィナーレをこの様な形で終わることは、とてもとても悲しいことですが、今はぐっと堪えて、大人の決断をしましょう! 念には念を入れて!いつの日か現役部員たちも含めて同じステージに立てることを祈念して、結びの言葉とします。また会う日まで! そして、皆さんご自愛くださいね! 後輩たちの今後の御活躍を期待しております!

付加価値のある活動、地域に開かれた活動を!

では、軽音楽部が市民権を得るために、その特性を生かした活動にどのようなものがあるでしょうか。私は、そのキーワードを「音楽による地域貢献」と捉えています。昨今、学校周辺の施設や町内会を見回してみると、お祭りやイベントがいくつも開催されていることに気付かされます。軽音楽部の活動は密閉された視聴覚室での合同ライブだけが舞台ではありません。私自身、ここに活路を見出そうと決めてからは近隣の店舗や地元の公民館等を訪れて、軽音楽部がお役に立てることがないかと打診してみました。その中には、「吹奏楽部ならば…」と相手にされないこと、お試しで携わらせてもらっても二度と声がかからなかったこと、ほんの数年で打ち切りとなったこともありました。一方ではレギュラー化したイベントもあり、特に音響担当もセットでの協力は歓迎されています。これらは、お金をかけられないが、主催イベントを開催したいと願う中小の施設や団体、ポップスを身近なものとして捉えている人口比率の増加といった時代背景と、私たち軽音楽部が提供できるものとの関係性が合致してきた表れと考えています。そして、学校と校外とのコーディネイトを図るのが大人である顧問の腕の見せどころです。技術指導ができなくても、率先して部のために動く姿が部員たちの信頼を得ることにつながるものと、確信を持って考えています。

高校軽音楽部は、まだまだ歴史が新しく、これからの部活動です。今日までの活動の中で、今後も大切にしていきたいもの、見直しを図りたいもの、今後新たに取り入れていきたいもの、これらを全国の顧問たちが共有し、意見交換をしていく場や機会が必要だと強く感じています。自校部内活動を中心とした孤軍奮闘により、今ある形を創出してきた黎明期から、他校との協働や地域にも開かれた活動を視野に入れた新機軸を打ち出すのに、機は熟してきているのではないでしょうか。

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