自分たちでいろいろなことをクリエイトできるところがすごく良いと思います

東京のど真ん中、中野区に所在する歴史ある新渡戸文化高等学校は、軽音楽部が新しく成長している学校です。まだまだコロナ禍で十分な活動ができなかったり、感染対策に神経を使わなければいけないご時世の中、部員のモチベーションを保ち、部活動の在り方を考えることは急務です。塚越先生にお話を伺って、「時代に合った距離感」の必要性を感じました。(2020/10/顧問通信VOL.32掲載)

自分たちでいろいろなことをクリエイトできるところがすごく良いと思います

【東京都】新渡戸文化高等学校 軽音楽部 顧問 塚越 環

今年の目標は「ファンを作る」

ー 現在の部員数を教えてください。

2年生が6人、3年生が2人です。新入生はまだ入部していません。例年だと、GW明けに入部という流れなんですが、1学期はすべてオンラインでの授業だったので、部活動もなるべくしない、できないという状態でした。部活動紹介も今年はリモートで行い、実際に部活動ができるようになったのは夏休みからです。8月に体験入部をして、最終的に入部すると思われるのは5人です。

ー 学内での認知度や地位はいかがですか?

軽音楽部はすごく活動し始めているので、学内でかなり認められてきていると思います。当校では剣道部が一番なんですが、その次ぐらいに頑張っていると言っていただいています。文化部では最も評価してもらっている感じです。

ー すごいですね。珍しいんじゃないですか?

はい。ありがたいと思います。毎年、軽音楽部で目標を立てているんですが、今年の目標は「ファンを作る」になりました。今年はコロナ禍でライブに出向いていったり、他校と交流することがなかなかできないので、外に発信していく前に、まず校内で軽音楽部やそれぞれのバンドのファンを作りたいっていうのが、部員の中で目標として出ました。

ー 素晴らしいアイデアですね。

来週(注:取材日9月5日)の木曜日に、初めて学校の中庭でライブを開くことになりました。大きい音は出せないのでアコースティックで行うつもりなんですが、部員みんなで協力して管理職の先生や部活動を総括している先生に許可をもらいに行ったりしました。さらに「アフタースクール」という学童保育の方にも交渉しにいって、何とか実現することになりました。付属の小学校からは「子どもたちにも聴かせたい」と言っていただいたりして、とても活動しやすい環境にあると思います。「全員マスクしてやります」って言ったら、「顔が見えないのは寂しい。フェイス・シールドあげるから使いなさい」と言っていただけました。

▲インタビュー取材後に行われた中庭でのライブの様子

「部則」を作ったことが大きい

ー 顧問になられた経緯を教えてください。

たまたまだと思います(笑)。前任の顧問の先生が退職なされたタイミングで私が着任し、ちょうど音楽の先生だったというだけだと思います。でも、その年に「もう軽音楽部はなくなるから」って言われていたんです。なので、私と一緒に入学した1年生が最後の部員になる予定でした。それが今の3年生なんですが、みんなすごくやる気があって、最後なのであれば、良い形で終わらせてあげたいなと思ってやっていたら、他の先生方から「頑張っているから続けさせてあげて欲しい」という声があったりして、継続ということになりました。

ー それは良かったですね。廃部どころか今や文化部で1番になってるわけですからね。

そうですね(笑)。活動の幅も他の文化部より多いと思います。当校は普通科に様々なコースがあるんですが、美術コースの部員が部活動紹介や体験入部のためのポスターをデザインしたり、動画を作ったりして活躍してくれています。

ー 何だかドラマのシンデレラ・ストーリーのようですが、他の先生方が応援してくれるようになった理由はどこにあると思いますか?

以前、デジレコ・ジュニア誌に掲載していただきましたが、一番は「部則」を作ったことだと思います。他の部活動ではあまり聞かないのですが、ちゃんと部則を作って、そこに向かってやっているっていうところが評価していただけている大きな理由だと思います。あと、前任の顧問の先生の時には、外に出て行うライブが1回と文化祭の年2回しか演奏する機会がなかったと聞いています。今では積極的に外に出てライブを行っているので、そういった面も頑張っていると感じてもらっている部分なのかなと思います。

ー 部則は効果的ですね。

当時、部員が15名ほどいたんですが、あまり部活動としてまとまっていなかったんです。個々に勝手にやっている感じで…。もちろん、軽音楽部はバンドごとの活動がメインになるんですけど、部活動としてやっているからには何かみんなで一緒にやっていきたいなという気持ちがありました。目標があった方がみんながまとまれるんじゃないかと思って部則作りを提案したら、賛同してくれる部員が多かったのでみんなで考えました。私は中学、高校と吹奏楽部だったので、はじめはそれに比べると軽音楽部はユルいなぁと思いましたけど(笑)、その自由さが今の時代には合っているとも思います。自分たちでいろいろなことをクリエイトできるところなんかはすごく良いなと思います。

▲新渡戸文化高等学校 軽音楽部の部則

「広報係を作ろう」「僕やる!」

ー 今後の目標のようなものはありますか?

特に大きなものはなくて、毎年その年の生徒に合わせてやっています。去年の生徒たちには「とにかくライブをやりたい。そういった場を作ってくれ、サポートしてくれ」って言われていたので、それをメインにやっていました。今年の生徒たちは、ライブがしたいっていうのはもちろんなんですが、とにかく「外に発信していきたい」という力がものすごく強くて、それが今年度の目標の「ファンを作る」につながっているんだと思います。あとは、SNSなどを使って外に発信していきたいとも言っていて、先日のミーティングでは、「じゃあ、広報係を作ろう」「僕やるー!」なんていう声が上がったりしていました。SNSは慎重にやらなければいけない部分も多いので、しっかりサポートしながらバックアップしていきたいと思います。

ー 軽音楽部は音楽を演奏するだけではなく、企画力や制作力が養えるのも良いところですね。

はい。今度の中庭でのライブに向けても、管理職の先生方に見てもらうために自分たちで図面をiPadで作ったり、資料をプリントして1枚1枚配ったりと、いろいろ工夫していました。質問やアドバイスを1つずつクリアしていっている姿がすごく良いなと思います。コロナの感染予防対策についても、学校では消毒や検温などはもちろんしているのですが、普段の練習中にこちらが何も言わなくても、自分たちで「マスクしろ!」とか言ってやってます。普段は、毎日最初の点呼や終礼でやることなどを確認しています。2週間に1度は全員参加のミーティングを行ったり、LINEのグループを作って情報共有をしたりしています。それでもこの間、終礼後に部員同士で「今日リモート会議やろう!」なんて言いながら帰っていました。

ー 何か、イケイケ状態で良いですね。

そうですね(笑)。部員が少ないからまとまれてるっていう部分もあると思いますけど、生徒たちも「やってる感」があるようで、楽しんでいるみたいです。人数が少ないので全員に役割があるっていうことが大きいのかなって思います。もともとライブの時でも、演奏していない時は裏方をするっていうのが普通ですからね。

音楽は幸せを作る

ー 普段はどんな指導をされていますか?

本当に私は何にもしていなくて。それこそ裏方というか、生徒が何かしたいって言ってきたら、「じゃあ、こうしてみれば」とか「こうやって交渉すれば」とか言って生徒を動かしているだけです。当校が掲げている目標の1つに「自立型学習者」というものがあるんですが、自学自習というか、なるべく自分で考えて行動するようにさせています。練習を見にいってアンサンブルをアドバイスすることはありますが、実技面は自分たちで調べたりしてやっています。

ー オリジナルとコピー、どちらが多いですか。

東京はオリジナルを作っている学校が多いので、他校さんの演奏を見たりしてオリジナルを作るようになってきています。私はどちらでも構わないと思っているんですが、自分たちで考えてそうしているようなので、それぞれのバンドに任せています。

ー 目指している軽音楽部像のようなものはありますか?

当校の初代校長である新渡戸稲造先生が、「この世に生まれた大きな目的は、人のために尽くすことにある。自分の名誉や利益のためではない。自分が生まれた時からこの世を去るまで、まわりの人々が少しでも良くなれば、それで生まれた甲斐があるというものである」という言葉を残されているんです。また、学校も「Happiness Creator(幸せの創造者)」として他の人が幸せになるように、ということを目標にしています。音楽って聴いても演奏しても「幸せを作る」と思うんです。音楽と関わっていると平和に向かっていけると思うので、自分だけではなく、いろんな人を幸せにできる人になって欲しいなと思っています。そういったことは部活動を通してよく言っています。

ー 音楽の先生らしいお考えですね。

今年はコロナ禍でみんな「幸せ」とか「希望」について考えたと思うんですね。そんな中で、哲学的に「何で音楽を聴いたら幸せになるんだろう」って考えてみたり、「音楽を聴いてハッピーになった」と感じる瞬間があると思うので、その辺りも今後軽音楽部として出せていけたら良いなと思っています。

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