第6回 プラスαで輝ける鍵盤プレイ

ボーカルやギターと違って、ステージ上を動き回ってパフォーマンスするのが難しいキーボード・パートですが、輝ける演奏で印象づけることはできます。今回は、繰り返しの練習と綿密な準備によって引き出せる「かっこ良い演奏法」を紹介します。ステージで「魅せる」ということは、偶然とノリだけに頼ってはいけないというお話です。(文・竹中敬一)

STEP1   キーボードのグリッサンド

「グリッサンド」とは、鍵盤上で手を滑らせて音を鳴らす演奏法です。ソロを取った終盤に感極まってたどり着く場合も多いですが、普段のフレーズの中でも効果的に使うことができます。音色によってもグリッサンドのイメージが変わってくるので、いくつかの音色で練習してみましょう。

ストリングス&ブラス編

音色の違いによって、グリッサンドの演奏方法は様々です。しかし、どの音色でもフレーズの中のある音を起点として、その音の処理の仕方としてグリッサンドを用います。

譜例1は、ストリングスの音色での練習フレーズです。ストリングスとは、チェロやバイオリンなどの弦楽器のことです。オクターブなので指が届かなければ両手で弾いても構いません。譜例のような短く細かいフレーズを弾く時は、アタックがしっかりと出る音色を選んでください。♩=80くらいのテンポで弾けると雰囲気が出るでしょう。グリッサンドをする時は、直前に手首を軽く持ち上げ、指を滑らせていく方向へ弧を描くように動かし、手首主導で軽く指を引きずるイメージで弾きます。グリッサンドは、あくまで付け足しですが、起点となる音はしっかりと弾くことがポイントです。練習では、長い距離をグリッサンドするのではなく、起点から5度下くらいまで弾いたら腕を上げましょう。

譜例1 ストリングスのグリッサンド練習用フレーズ。繰り返し練習しよう

譜例2は、トランペットやサックスなどの管楽器によるブラス・セクションの音色での練習です。実際に楽器を吹いているイメージを持って最後の和音をグリッサンドします。ストリングスの時より、起点の和音を気持ち長めに押さえます。速くグリッサンドすればシャープなブラス・フレーズに、ため気味にグリッサンドすれば、ファンク・ミュージックなどで聴ける粘っこい雰囲気が出せるでしょう。休符と音符の長さをしっかりと捉え、繰り返し練習してください。

譜例2 ブラス・セクションのグリッサンド練習用フレーズ。リズムを感じよう

オルガン&ピアノ編

オルガンは、弾く強さ(ベロシティー)で音量が変わりません。そんな特徴を生かし、オルガンの場合は手のひらや束ねた指を使って音圧のあるグリッサンドをしましょう(写真1)。下降だけではなく、上昇も有効です。手を筆に見立てて、並んだ鍵盤の上に力強く数字の「一」や、カタカナの「ノ」の字を書くようにするつもりで行いましょう。ロータリー・スピーカーのエフェクトがある場合は、必ずFastにしておいてください。派手な音色を演出できます。

最後にピアノです。鍵盤が重いので、途中で引っかからないように親指と人差し指でしっかりと滑らせましょう。ピアノは減衰音の楽器なので、必ずダンパー・ペダルを踏んでおきましょう。

写真1 オルガンは手のひらでグリッサンドしてもOK

 

STEP2   ベンド&モジュレーションを使った奏法

楽器を演奏している人なら、「ステージ上で歌ってみたい」という気持ちは少なからずあると思います。楽器のソロはそれに代わるものだと言っても良いでしょう。キーボードでも、ソロの音色によっては歌に匹敵する表現ができます。弾くフレーズを「+α」の機能を使ってエモーショナルなプレイに進化させましょう。

ピッチ・ベンド

キーボードの左側にはいくつかのコントローラーが並んでいますが、その1つにピッチ(音程)をベンド(曲げる)するコントローラーがあります。メーカーによって形や向きは様々ですが、このコントローラーでリアル・タイムに弾いている音の高さを上げ下げすることができます。初期設定はおおむね、センターからプラス方向に傾けると音程が上がり、マイナス方向に傾けると下がるようになっています。その変化の幅は長2度がほとんどです。

奏法は、「弾いた音をベンドする」「弾いた音へ達するようにベンドする」の2パターンに大きく分かれます。前者はギターのチョーキングのような使い方、後者はあらかじめベンドを下げておき、目的の鍵盤を弾いたあとにベンドで音程を戻します。譜例3の1小節目の冒頭は、ベンドを使った「上げ」フレーズです。STEP1同様、正確にリズムを感じてプレイすることが原則です。下段のようなリズムになるようにコントローラーを動かしましょう。下段の後半2ヶ所は、戻す形です。

譜例3 「B」はベンド、「M」はモジュレーション。下はベンドを使った時のリズムのイメージ

ギター・ソロを弾いているようなプレイをキーボードで再現したい場合、マイナス方向のベンド幅を完全5度の音程か、それ以上に設定しておきます。こうすることで、マイナス方向の音程は不安定になり、ベンド幅の動かし加減と自分の耳を頼りに音程を取らなくてはならなくなります。また、下げ幅を広く設定することで、ギター特有のスライド奏法も再現できます。この、ある種の不便さや制限こそが、ギター・パートの持つ人間臭い演奏に近づけられる要因です。

モジュレーション

「モジュレーション」とは「変調」という意味です。このエフェクトをかけると、周期的な波で音を揺らす効果が得られます。いわゆるビブラートのような感じです。ピッチ・ベンドの横に並ぶホイールや、ベンドをY軸プラス方向へ傾けると、モジュレーションがかかります(写真2)。

写真2 ピッチ・ベンドとモジュレーションが1つになったコントローラーの例

自分の感情とシンクロするようにビブラートをかけ、歌心あるメロディー・ラインやシンセ・ソロを演出しましょう。

「ネコふんじゃった」に隠された秘密

小さい頃、鍵盤楽器を遊具の1つとして触っていたり、「ネコふんじゃった」を弾いて遊んでいたという人もいるのではないでしょうか。

面白いことに、実はこの「ネコふんじゃった」という楽曲をみんな同じキーで弾いているのです。そのキーはGbメジャー。フラットが6つもつくかなり難易度の高い調性です。では、なぜ難しいGbメジャー・キーで弾くのかというと、最初のメロディーを白鍵よりも少し高い位置にあって弾きやすい黒鍵だけで全部弾けるからです。中には手をグーにしたまま弾いた人もいるでしょう。

黒鍵は日本固有の五音階(ヨナ抜き音階)と同じ並びをしているので、黒鍵をいい加減に弾いても日本的なメロディーになったりします。黒鍵をグリッサンドすると、まるで箏を弾いているかのような和の響きがしてくるから不思議です。

▲黒鍵をグーで弾いてもメロディーに聴こえる

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