第5回 「3連系」のグルーヴを身につける

ドラムのリズム・パターンには、通称で呼ばれているものがいくつかあります。中でも、近年のJ-ROCKやJ-POPでよく聴かれるパターンが「ハチロク」や「シャッフル」です。もちろん、楽曲によってテンポやアクセントのつけ方、音数の多さなどに違いはありますが、「3連符」を基本としたパターンには変わりありません。3連系のグルーヴを身につけると、様々なことに良い影響が現れます。(文・辻 伸介)

STEP1  「ハチロク」の基本パターンとグルーヴ

8分音符で6拍子をとる「8分の6拍子」のリズムを、ポピュラー・ミュージックでは「ハチロク」と呼ぶことがあります。4分音符を均等に3つに割った「3連符」を4つ続けた8分の12拍子も、テンポが遅い場合には同じくハチロクと称される場合もあります。

ロックの起源である「ブルース」という音楽をルーツに持つハチロクには、ドラムにも基本のリズム・パターンとグルーヴがあります。ポピュラー・ミュージックの歴史を振り返えるようにハチロクを練習していけば、テクニック的にもグルーヴ的にもドラム演奏の基礎が理解でき、成長につながっていきます。

3拍子の「回転」を身につける

ハチロクのリズムは、「3連符」あるいは「3拍子」を理解することから始まります。3拍子の上下運動は、1拍目がダウンで3拍目がアップになります。これをスティッキングに置き換えると、1打目はダウン・ストローク、2打目はタップ、3打目はアップ・ストロークになります(譜例1)。

譜例1 3拍子の回転を意識しよう。「D」はダウン・ストローク、「T」はタップ、「U」はアップ・ストローク

まずは、右手だけでこのストロークをゆっくりなテンポから繰り返し練習しましょう。ポイントは、アップの時には手首から上がり、次のダウンへは手首を返して、スムーズに3拍子が「ズンタッター」と回転していることです。リラックスして腕の力を抜くように心がけながら行いましょう。

▲3連符の叩き方には、ダウン(左)、タップ(中)、アップ(右)の3種類のストロークを使う

右手がスムーズに3拍子を叩けるようになったら、左手も加えて両手で行ってみてください。鏡の前で右手と左手の動きがきれいに対称になっていることを確認しながら行うと効果的です。また、足でもこの動きができるようにキック・ペダルやハイハット・ペダルを踏んでみてください。

基本パターンでの練習

3拍子の回転が体で理解できるようになったら、ドラム・セットで演奏してみましょう。他の8ビートのパターンなどと同じように、上半身のフレーズは固定してバス・ドラムのパターンを少しずつ変えていきます(譜例2)。バス・ドラムのアクセントがどこにきても、右手ハイハットの3拍子が崩れないように注意しましょう。それには、手だけではなく体全体で3拍子の回転を感じている必要があります。

譜例2 1つのパターンが気持ち良くなるまで繰り返そう。テンポは♩=40から始めて、♩=80ぐらいまでが目標

また、3拍子を叩いていると、3打目のアップから1打目のダウンまでが1つの流れで動いているように感じると思います。これが3連符系のグルーヴの正体であり、すべてのグルーヴの基礎になります。その流れが止まらないように気をつけて練習していきましょう。

 

STEP2   「シャッフル」の基本パターンとグルーヴ

ハチロクから派生した3連系のリズムは多く、日本では「ハネ系」「ハネもの」などと呼ばれています。代表的なものとしては、軽快にスキップをしているようなリズムが特徴の「シャッフル」がありますが、シャッフルは8ビートの元となったリズムで、ドラマーの必須科目の1つです。マスターすれば様々な基本を身につけられ、ドラミングの幅を広げることができるでしょう。

シャッフル

シャッフルは、ハチロクと比べてテンポが速く、3連符の2つ目を演奏しない「中抜き」であることが特徴です(譜例3)。

譜例3 3連符の2打目を抜くと「シャッフル」に

ハチロクの時の2打目のタップを叩かずに、1打目のダウン・ストロークと3打目のアップ・ストロークのみを叩くと、軽快な「タッタタッタ…」というリズムになります。3つの打点すべてを叩くわけではないので、まずはしっかりと3連符を意識しながら2つの打点の距離を保つことを心がけましょう。初期の練習では、2打目のタップを逆の手で叩くとタイミングがわかりやすくなります(譜例4)。

譜例4 Rは右手、Lは左手の意味

スムーズにできるようになったら、右手と左手を入れ替えて左手スタートで始めてみたり、右手とバス・ドラムをユニゾンしてやってみてください。

裏メトロノームで練習

3連符では1打目を「表」、3打目を「裏」と呼びます。シャッフルの場合でも、ハチロクの時と同じようにアップ・ストロークからダウン・ストロークへと流れていくイメージを持つことが大切です。「タタッタタッ」と裏から表へと手や足のストロークが動いていることを常に意識しましょう。

最も効果的な練習は、譜例3や譜例5などを「メトロノームを3連の3つ目に感じて」叩くことです。はじめのうちは、まず3連符を口ずさんでリズムをとってから3つ目(裏)のタイミングでメトロノームのスタート・ボタンを押すようにすると良いでしょう。しかし、その感覚をキープするのは難しく、かなりの慣れが必要です。まずはゆっくりなハチロクでタイミングと感覚を練習してから、徐々にテンポを上げて2打目を抜いていきましょう。

譜例5 シャッフルは8分音符の裏を3連符の3つ目として捉えて、「ハネ」て読むように表記する

▲メトロノームを「裏」にして、気持ち良くグルーヴできるまで頑張ろう

裏の場所にあたるハイハットやバス・ドラムがメトロノームとズレていないかに注意しながら、一番大切な「ストロークもリズムも裏から始まる」ことを常に意識しながら、体が覚えるまで繰り返してください。

日本人は3連に弱い?強い?

音楽理論では、「拍子」は2拍子と3拍子が基本で、この2つを「単純拍子」と呼びます。「1、2、1、2…」とクワを使っていた農耕民族の音楽は2拍子が多く、馬に乗って意気揚々と闊歩していた狩猟民族の音楽は3拍子が多いと言われています。農耕民族である日本人は、軽快な3拍子よりも2拍子の方が馴染みやすいと思われがちですが、日本人の祖先は大陸から流れてきたという説もあり、一概に日本人=農耕民族とは言いきれないかもしれません。

小さい頃、オシリに蒙古斑があった人もいるかもしれませんが、それはモンゴロイドという人種の証拠です。蒙古(モンゴル)の人々はもともと大草原を駆けまわる騎馬民族です。日本人にも3拍子が気持ち良いと感じるDNAが受け継がれているかもしれません。遺伝子を呼び起こして3連のグルーヴを極めよう!

▲モンゴルの草原を駆ける気持ちで演奏しよう

 

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