第4回 「スラップ奏法」の上達メソッド

ベーシストなら誰もが一度は憧れる「スラップ奏法」。昔は特殊技能のような扱いでしたが、今では指弾きやピック弾きと並ぶベースの3大奏法の1つとなり、ロックやポップス、歌モノにいたるまで、様々なジャンルに取り入れられています。表現の幅を広げるためにも、ぜひこの機会にマスターしましょう。(文・山田潤一)

STEP1  正しいフォームとオクターブ奏法

スラップは、親指で弦をはじく「サムピング」と、人差し指で弦を引っ張る「プル」という奏法を基本としています。それらを行うためにとても大事なのが手首の回転です。サムピングは手首を内側に回転させ、プルは外側に回転させるのですが、指の力で押さえつけたり引っ張るのではなく、手首を回転させスナップを利かせるイメージです。まずは、手首だけを動かす「素振り練習」から始めましょう。力んでしまうとうまく弦をはじけないので、体の力を抜いてリラックスして行うように心がけてください。

サムピングとプルの練習

まず「サムピング」の練習です。はじめに、うちわを扇ぐようなイメージで手首の素振りを何度か繰り返してから、その動きをキープしたままサムピングをする位置に腕を持っていきましょう。弦に当てるのは、親指の第一関節の側面、やや上の部分でフレットの一番端を狙います。また、弦をはじいた後は下の弦に当てて止めるようにします。例えば、4弦をスラップした場合は、3弦に当てて止めます(写真1)。

写真1 親指を当てる場所に気をつけよう

「プル」の場合も、同様に手首の回転を使って行います。サムピングをした後、外側に振りかぶるのと同時に、人差し指に弦を引っ掛けます。コツとしては、例えば、4弦をサムピングした場合、そのタイミングで1弦と2弦の間に人差し指を入れて、プルの準備をしておきます(写真2)。だたし、人差し指が深く入ってしまうと、弦を引っ張りにくくなるので、注意しましょう。人差し指の先0.5cmから1cmのあたりで弦を引っ掛けるようにすると良いでしょう。

写真2 プルの人差し指が深く入らないように

オクターブ奏法

これらを踏まえて、サムピングとプルを交互に弾く「オクターブ奏法」という弾き方をメトロノームに合わせて繰り返し練習しましょう(譜例1)。最初は音がうまく鳴らなくても構わないので、手首の動きを意識して毎日最低でも10分は同じ動きを続けましょう。スラップの練習は筋トレと同じで、続けるうちに自然と体が動きを覚えていきます。指弾きやピック弾きに比べて、なかなかうまくできないかもしれませんが、諦めずに練習を続けていけば、必ずスラップができる筋肉がついてきます。頑張ってトライしていきましょう。

譜例1 スラップを使ったオクターブ奏法。手首の回転を意識しよう

 

STEP2  左手とのコンビネーション奏法

スラップは右手のサムピングとプルだけではなく、左手でフレットを押さえてフレーズを弾きます。ベースを弾く上では当たり前なことですが、スラップの場合は「ゴースト・ノート」を出して、パーカッションのように演奏することもあります。ゴースト・ノートとは、左手でフレットを叩いて、音を出さずにリズムだけを出す奏法のことです。使いこなせばスラップ・ソロなどにも役に立つテクニックなので、ぜひ習得しましょう。

左手でのゴースト・ノート

まずは、左手でゴースト・ノートを出す練習です。人差し指で1から3弦の5フレットをギターのセーハのように押さえて、他の3本の指で弦を叩きます(写真3)。この時、指は曲げないで指の腹のあたりで叩くように心がけましょう。押さえつけてしまうと音として鳴ってしまうので、フレットではなく弦に指を当てるようにすることがポイントです。この動作ができるようになったら、♩=80くらいのゆっくりなテンポの8分音符で、この動きを繰り返す練習をしましょう。

写真3 弦を叩いた時に左手の指が曲がらないように注意しよう

左手のゴースト・ノートがスムーズにできるようになったら、右手とのコンビネーションで練習します。①右手のサムピングで4弦0フレットを弾く。②左手でゴースト・ノートを出す。③2弦5フレットをプルする。④左手でゴースト・ノートを出す…と、右手と左手を交互に動かす練習を、メトロノームを使ってゆっくりなテンポから徐々に速くしていきましょう(譜例2)。注意点としては、弦を叩いている音が出ないとフレーズとして成立しないので、ゴースト・ノートの音をしっかりと出すことです。

譜例2 ゴースト・ノートの音をしっかりと出すようにしよう

パターンを変えた練習

慣れてきたら、自由にいろいろなパターンで練習してみましょう。例えば、サムピングとプルの順番を変えてみる、プルする弦を3弦→2弦→1弦→2弦と、違う弦で弾いてみる、人差し指ではなく中指でプルをしてみる…などが有効です。

際にバンド演奏の中でスラップを行う場合に、特に気をつけて欲しいポイントは「リズム」と「テンポ感」です。当たり前のことですが、スラップの技術が向上しても、リズムやテンポがめちゃくちゃでは意味がありません。日頃からメトロノームを使って地道に練習していくことで、確実なテクニックが身についていきます。

スラップの歴史

諸説ありますが、スラップを初めて演奏したのは、1960年代から70年代にかけて活躍したベーシスト、ラリー・グラハムだと言われています。サムピングをバス・ドラム、プルをスネア・ドラムに見立てて演奏したことが始まりで、初期にはパーカッション的なプレイも聴くことができます。

英語では「Slapping & popping」または「Thumbpin’ & pluckin’」と呼ばれていますが、日本ではティン・パン・アレーのベーシストである後藤次利が、1975年発表の「チョッパーズ・ブギ」という楽曲の中で、スラップを演奏する姿がチョップしているように見えたことから、曲名も相まって「チョッパー」と呼ばれていました。

近年では様々なジャンルで、いろいろなスタイルのスラップがあるので、研究してみると面白いのではないかと思います。

▲派手なパフォーマンスでステージも熱く

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