第4回 ボーカルの表情のつけ方・1

ロック、ポップス、R&B…と、どのジャンルにも求められるボーカル・テクニックと言えるのが、歌に対する「表情のつけ方」です。中でも、代表的な「ビブラート」や「ロング・トーン」、そして「しゃくり」「フォール」といったテクニックを身につけていくことで、様々なジャンルを歌う時に役立ちます。(文・伊丹谷良介)

STEP1  ビブラート、ロング・トーン

歌唱テクニックの中で最も代表的なものが「ビブラート」と「ロング・トーン」です。この2つをマスターすることで、歌の表現力を一気にアップさせることができます。ただし、ボーカルの基礎である「正しい発声」や「リズム・キープ」などをしっかりと練習していないと、せっかくの表現力も効果が薄くなってしまいます。基礎練習とともに表現のテクニックを身につけましょう。

ビブラートのトレーニング

発声した後に「声を揺らす」テクニックを「ビブラート」と言います。ビブラートには大きく分けて「音程のビブラート」と「音量のビブラート」の2種類がありますが、どちらもきれいに行うコツは、「声の波」をきちんと定期的に作ることです。音程のビブラートの練習には、半音の移動を使っていろいろなリズムで声の波を作ることが有効です(譜例1)。音量のビブラートのトレーニングも、同じようにメトロノームを使って音符の長さを意識しながら発声の量を変える練習をしてください。ビブラートの波がしっかりと安定した状態で何小節持続できるかをチェックしながら、時間をかけて♩=70、80、90と徐々にテンポをアップさせましょう。決して焦らずに、時間をかけてトレーニングすることが上達への近道です。

譜例1 譜面はソとソ♭にしてありますが、自分の出しやすい音程で行おう

音程と音量のビブラートができるようになってきたら、その両方を自分なりにミックスさせてみましょう。きれいなビブラートが表現できるようになっていると思います。

ロング・トーンのトレーニング

「ロング・トーン」とは、1音を乱れることなく長い間延ばし続けることですが、腹式呼吸などの正しい発声が行えていないとマスターできない難しいテクニックです。まずは息を吸った時にお腹が膨らみ、吐いた時にお腹が凹む腹式呼吸がきちんとできているかを確認しましょう。そして、腹式呼吸を意識しながら声を出さずに長い時間かけて空気を吸って、長い時間かけて空気を吐く…という練習を繰り返します。この時のポイントは、「一定量の空気を吸い、それと同じだけの量の空気を吐き続ける」ということです。

ゆっくりと大きい腹式呼吸ができるようになったら、次に自分の出しやすい音程で発声してみましょう。最初は音量が小さくても構いません。同じ音程、同じ息の量、同じ音量の声を出し続けることが大切です。最初は2秒から3秒の短い時間で行い、徐々に時間を延ばし、声の音量も上げていくように練習していきましょう。時間を延ばせば延ばすほどロング・トーンに乱れが生じてくると思いますが、その場合は呼吸の乱れが原因なので、腹式呼吸を整えましょう。

▲声だけではなく、身振り手振りも使って行おう

 

STEP2  しゃくり、フォール

ビブラートとロング・トーンに加えて、歌に対する表情のつけ方として代表的なテクニックが「しゃくり」と「フォール」です。この2つのボーカル・テクニックをマスターすることで、歌の表現力をさらにアップさせることができます。ただし、この2つも正しい発声やリズム・キープなどの基礎練習ができていないと効果がありません。

しゃくりのトレーニング

しゃくり」とは、メロディーを低い音程から「ずり上げる」ように歌う歌唱法です。例えば、前の音が「ド」で次の音が「ラ」だとしたら、ラの前に「ファ」や「ソ」といった経過音を入れて滑らかに歌うテクニックです。音を階段に例えると、段差が大きいところに段を作って上がりやすくするイメージです。まずは自分が発声しやすい音程で構わないので、低い音から1オクターブ高い音に向かって練習しましょう(譜例2)。はじめは自由なテンポで行い、慣れてきたらメトロノームを使ってリズムの中で練習すると良いでしょう。スムーズにできるようになったら、いろいろな音程で行ってみてください。

譜例2 低い音をまず発声し、そこからオクターブ上の音程に滑らかに移行する

しゃくりは表現としてだけではなく、メロディーの音程が取りにくい場合にも有効です。少し低めの音から始めることで、いきなり高音を出すよりも声帯への負担が減り、狙った音が出しやすくなります。

フォールのトレーニング

「フォール」とは、しゃくりと逆の発声法で、本来の音程から低い音程に向かって瞬間的に滑らかに音を下降させるテクニックです。フォールは正しい音程を発声してから下げるので、しゃくりよりもやりやすいと感じる人も多いかもしれませんが、フォールした後に音程が定まらなかったり、音量が弱くなってしまいがちなので注意しましょう。まずはテンポを決めて、1オクターブの音程をいろいろな長さでフォールさせる練習をしましょう(譜例3)。それができるようになったら裏声などを使って、もっと上の音程から下降するなどのトレーニングをしてみるのも効果的です。

譜例3 本来の音程からオクターブ下へ、もしくはオクターブ上から本来の音に下降させる

▲「高低差」をイメージしながら行おう

子供はみんな天才シンガー

「上手な歌」と「感動を生む歌」は少し違います。例えば、幼稚園のお遊戯会などでは歌のテクニックを多用する園児などいません。しかし、彼らの歌はとても感動的で魅力的です。テクニックを学ぶのと同時に「感動を生む歌とは何か」も考えてみてください。

歌は歌唱テクニックを伝えるためのものではありません。歌唱テクニックを通して「気持ちや歌詞のメッセージを伝える」ことが大切なのです。幼稚園児は歌唱テクニックがなくても全身で素直な気持ちで歌います。だからこそ「感動を生む歌」が歌えるのかもしれません。大人になるとそういったことを忘れがちです。あまりテクニックにこだわりすぎず、「素直に歌う」ということも大切にしながら、様々な歌唱テクニックを磨いていきましょう。

▲幼稚園児のように素直に歌を歌おう!

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