第3回 ボーカルのリズム・トレーニング

ロック風、ポップス風、R&B風と、歌い方には様々なスタイルがありますが、どのジャンルの歌い方にも求められるテクニックとして、「4分音符や8分音符でリズム・キープする」ことと、「裏拍でリズム・キープする」ことが挙げられます。この2つをマスターすれば、どんなジャンルにも役立ちます。(文・伊丹谷良介)

STEP1   4分音符・8分音符でリズム・キープ

歌唱テクニックで重要なポイントは「発声力」と「リズム感」です。ボーカリストには、正しい発声ができた上に、それを音楽に乗せて歌う「リズム感」が必要です。リズム感が乏しければ、せっかくの良い発声力も台無しになってしまいます。特に、最近のJ-POPやJ-ROCKには、リズム感のスキルが求められる曲が多くなってきています。発声力と同時にリズム感のスキルも磨きましょう。

4分音符のトレーニング

まず、4分音符を「いち・にい・さん・しい」と発声せず、「one・two・three・four」と英語の発音読みの感覚で発声できるようにしましょう。なぜかと言うと、日本語は「母音」の言語なので、ひらがなの時の文字数を見てもわかるように「い」と「ち」の2つの音がセットになっているため、1つの音符では発声しにくいからです。これでは鋭くはっきりとした4分音符を発声することはできません。

かといって、「ワーン・トゥー・スゥリー・フォー」と、カタカナ読みで発声しては意味がありません。例えば、「one」は「ワン」と発声せずに、「ワッ」くらいのひとかたまりの音のイメージで発声すれば、正確なタイミングで発声することができます。カタカナ表記で書くと、「ワッ・トゥッ・ツリッ・フォッ」くらいの感覚がちょうど良いでしょう。それができたら、メトロノームなどを鳴らして、好きなテンポに合わせて4分音符のカウントを発声してみましょう(譜例1)。

譜例1 声を遠くに飛ばすように、大きな声でジャスト・タイミングで発声しよう

8分音符のトレーニング

次に、8分音符のトレーニングです。8つの音を4分音符と同じように、ひとかたまりの音のイメージで「ワッ・トゥッ・ツリッ・フォッ・ファィ・シッ・セッ・エィッ」というように、メトロノームなどに合わせて発声してみてください(譜例2)。4分音符より音符が細かいので、最初は遅めの♩=80くらいのテンポでトレーニングすると良いでしょう。何となく行うのではなく、必ず「録音」して、メトロノームとジャスト・タイミングで発声できているかを確認しながら行いましょう。

譜例2 録音して正確なリズムで発声できているかを確認すると、より効果的

このトレーニングは、腹式呼吸を使った声で行った方がより効果があります。ゆっくりなテンポから徐々に速くしていくなど、様々なテンポでのトレーニングを心がけましょう。

▲リズム・トレーニングの時でも、声を出す場合は腹式呼吸で行おう

 

STEP2   裏拍でリズム・キープ

J-ROCKやJ-POPは、洋楽に強く影響を受けているため、「裏拍」にアクセントのあるリズム・アレンジがほとんどです。また、メロディーもリズムに対してアクセントが作られているため、日本語の歌詞でも英語のような裏拍のリズム感があり、それを歌いこなすスキルがボーカリストに求められることになります。

日本語の日常会話には「裏拍のリズム感」がないため、ついつい日本語のリズム感である「表拍」のアクセントで歌ってしまいがちです。ポピュラー・ミュージックを歌うためには、裏拍のリズム・トレーニングをすることが重要です。

8分音符の偶数(裏拍)

まず、STEP1に習って「8分音符」をしっかりと発声します。次にその8分音符の奇数(表拍)「1、3、5、7」を小さな声で、偶数(裏拍)「2、4、6、8」を大きな声で発声します(譜例3)。おそらく、奇数だけよりも偶数だけを大きな声で発声する方が難しいはずです。慣れるまで何度も何度も練習してみてください。ポイントは根気よく、しぶとくテンポに合わせて反復することです。繰り返して発声していると、だんだんリズムに乗って発声しやすくなってくると思います。

譜例3 偶数の裏拍だけにアクセントを付けて発声してみよう

スムーズにリズムに乗ってできるようになったら、次は奇数を発声せず、偶数だけをテンポに合わせて大きな声で発声してみましょう。メトロノームなどを使って、焦らずにゆっくりなテンポから始めてください。

パルス・チェンジで練習

8分音符の裏拍だけを発声できるようになったら、「4分音符」→「8分音符」→「8分音符の裏拍」を繰り返しテンポに合わせて発声する練習を行います(譜例4)。この時、8分音符の裏拍は「1、2、3、4」に置き換えて発声します。おそらく「8分音符の裏拍」から「4分音符」に切り替わるタイミングで、リズムがひっくり返ってしまいがちになるのではないかと思いますが、それは裏拍を体で取れていないから起こることなので、地道に練習を繰り返しましょう。

譜例4 「4分音符」「8分音符」「8分音符の裏拍」の3小節を何度も繰り返して練習しよう

これができれば、自然な裏拍が体に染みついて、どんな曲でもいろいろなリズム感に対応できるようになります。このトレーニングも、ゆっくりなテンポからだんだんテンポ・アップさせていくように練習しましょう。

西洋と東洋のリズム感の違い

「リズム感」において、西洋人と東洋人には大きな違いがあります。例えば、カタコトで日本語を喋る外国人のアクセントを聞いてみると、彼らの喋る日本語には大きく分けて2種類の「訛り」があることがわかります。東洋の外国人は「コン(強)ニチ(弱)ワァ(強)」と表拍のアクセントで訛り、西洋の外国人は「コン(弱)ニチ(強)ワ(弱)」と裏拍のアクセントで訛ります。東洋の中国語や韓国語はアクセントが表拍で、西洋の英語やフランス語はアクセントが裏拍のため、そういった訛りの癖が出るのです。

現代の音楽は、西洋で生まれた音楽をもとに作られているので、東洋人が裏拍で歌いにくいのは当然とも言えます。日本人を含め、東洋人は西洋のリズム感に合わせたメロディーを歌えるように、しっかりとリズム・トレーニングすることが不可欠だということです。

▲訛るのは表拍?裏拍?会話もリズム

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