キーボーディストは両手のテクニックやコンビネーションだけではなく、「サスティン・ペダル」を生かした演奏ができるようになれば、表現の幅が格段に広がります。特にバラード曲などのピアノ伴奏では必須です。「鍵盤を弾く」「ペダルを踏む」という2つの動き、相互のタイミングがポイントになってきます。(文・竹中敬一)

STEP1   ペダルを踏むタイミングの基本

「サスティン・ペダル」とは、キーボードに付属する、弾いた鍵盤の音を伸ばすことができる機能を持つペダルのことです。厳密には、弦の振動を止める装置のことをダンパーと言い、電子ピアノにはその装置はないのですが、「ダンパー・ペダル」と呼ぶこともあります。

キーボードに接続する場合は、「Sustain」「Damper」「Hold」などと書かれたジャックに挿します。メーカーによって極性が違うので、「ペダルを踏んでいないのに音が伸びる」現象が起こったら、キーボードと同じメーカーのペダルに変更するか、極性を変えられる機能のあるペダルであれば、逆の極性に設定してみましょう。ちなみに、YAMAHA、RolandとKORGは極性が逆です。注意してください。

▲キーボードの背面にあるジャック

ペダルを踏むタイミング

ピアノを習った経験のない人は、最初はどのタイミングでペダルを踏んだら良いのかわからない人が多いのではないでしょうか。

まず、Cメジャー・トライアドの基本形を弾きながら、サスティン・ペダルを踏んで音をつなげる練習をしてみましょう。譜例1は、踏むタイミングを図にしたものです。鍵盤を弾き、ちょっと遅れてペダルを踏みます。踏んだまま次の音を弾き、またちょっと遅れてペダルを踏み直します。この「ちょっと遅れて」というのがミソです。踏み直すという動きは「前の音を切って、新しく弾いた音を伸ばす」ということなので、「ちょっと遅れて」の加減で音が濁ってしまわないよう、弾いたあとの踏み直すタイミングをつかんでいきましょう。

譜例1 サスティン・ペダルを踏むタイミング。カギカッコの左側の位置で踏み、右側の位置で離そう

▲サスティン・ペダルは踏むタイミングが大事

「転回形」での練習

次は、トライアドを転回していきながら練習してみましょう(譜例2)。コードの一番高い音を意識して、しっかりと鍵盤を押さえ、音の鳴りを確認してからサスティン・ペダルを踏みましょう。構成音は同じなので不協和音にはなりませんが、それぞれのボイシングをはっきり聴かせるために、毎回踏み直してください。余裕があれば左手も加えたり、実際にライブで演奏するようなスタイルで弾いてみましょう。

譜例2 カギカッコは書いていないが、譜例1と同じタイミングで踏もう

 

STEP2   コード・チェンジする時のペダルの使い方

構成音の違ういくつかのコードを滑らかにつなげて弾く時こそ、サスティン・ペダルが必要になります。コードが変わる時に意味のない休符ができてしまったり、素早いコード・チェンジに慣れていない場合などは、サスティン・ペダルが使えるととても便利です。ただし、楽曲の進行がわかりにくくならないよう、コードが濁らない踏み方をマスターしましょう。

鍵盤の移動が少ない場合

まずは、音の動きがあまり激しくない場合のコード・チェンジの練習です。譜例3は、よく見られる基本的なコード進行です。右手でコードを押さえる度にペダルを踏み直します。メトロノームに合わせて弾き、テンポ、コード・チェンジのタイミングを気にしつつ、実際に自分の演奏を耳で聴きながら、ペダルを踏むタイミングを探ってみましょう。

譜例3 右手とペダルを踏む足のタイミングに、ばらつきが出ないよう気をつけよう

コードが変わるタイミングはもちろん、同じコードを押さえる時もペダルを踏み直します。踏みっぱなしでも和音自体の音は濁らないのですが、音の粒がぼやけて聴こえるので、演奏の中で拍とコードの刻みをしっかりと聴かせたい場合は、同じコードであっても踏み直すことを心がけましょう。

▲コード・チェンジしてもタイミングは一緒

鍵盤の移動が激しい場合

譜例4のように、音が激しく跳躍している中で、滑らかにつなげることが求められている場合、ペダルは必須です。ただし、音の動きが大きくなったとしても、ペダルを踏むタイミングは変わらないので、難しく考えずに練習していきましょう。

譜例4 これらの音が途切れず、しかも濁らないよう注意してペダルを踏もう

一番難しいのは、フレーズを弾く中でのペダリングです。隣り合った鍵盤へ滑らかに進行するメロディーなどの場合、ペダルを踏みっぱなしで演奏してしまうと、結果として不協和音になって音が濁ってしまいかねません。音をつなげたい場合でも、フレーズを吟味しながら音楽的な解釈も忘れないようにしましょう。

軽音楽部に入部してキーボードを始めたという人は、あまりサスティン・ペダルの必要性を感じていないかもしれません。しかし、サスティン・ペダルを踏むという動きも、楽器を演奏する行為の一部です。演奏のノリやグルーヴを作り出す要素としても大切なので、演奏しながら一番気持ちの良いタイミングを見つけてください。

ロック史に名を刻む名曲のペダル・プレイ

ロックの歴史の中には、ペダルを踏んだまま演奏することで独自のサウンドを生み、歴史に残る名演になった楽曲があります。それは、ザ・ビートルズが1967年に発表した「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」です。

この楽曲のエンディングで鳴り響く音は、サスティン・ペダルを踏んだままEメジャーコードをピアノで弾いたものなのですが、最初に3台のピアノを4人で同時に弾いた演奏をまず録音し、その演奏を聴きながら同じように3回録音を重ねてできています。つまり、計12台で演奏したように聴こえるわけです。音が鳴っている間、ペダルは踏みっぱなしです。だんだんと消えていく音を最後まで録音するため、録音レベルをどんどん上げていった結果、イスがきしむような音や譜面をめくるような音もわずかながら入っています。ぜひ、音源を聴いてみてください。

▲ザ・ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』

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