第2回 どのジャンルにも役に立つ正しい発声

ロック、ポップス、R&B…と、歌い方には様々なスタイルがあります。どのジャンルの歌い方にも求められるボーカル・テクニックは「しっかりと喉を開いて、正しい発声で歌うこと」と「声の音色をコントロールすること」です。逆に言えば、これらをマスターすれば、どのジャンルを歌う場合でも役に立つということです。(文・伊丹谷良介)

STEP1  喉を開くトレーニング

腹式呼吸ができるようになった次のステップは「喉を開いて歌えるようにする」ことです。シンプルに言うと、口の奥のスペースを広く確保して、声をしっかり共鳴させることです。普段、人間は舌根(舌の根元)が上がって喉を閉めた状態で喋っています。しかし、歌う時は喉を開いた状態で歌わないと、大音量の演奏に声がかき消されてしまいます。意図的に喉を開いて、口の奥の空洞スペースを確保するトレーニングをしましょう。

リップロールから地声に

口の奥には「舌根」と「軟口蓋」という部分があります。その舌根を下げて軟口蓋を引き上げれば、口の奥に空洞部分を確保することができます(図1)。

では、実践トレーニングとして喉を開いて声を出してみましょう。まずは、腹式呼吸で大きく空気を吸って、リップロールで発声します。自分の発声しやすい音程で構いません。リップロールの時は、舌根が下がって口の奥のスペースが広く開いている状態なので、そのまま舌根を下げた状態で「プルルルルゥァアアアア~」と音を止めずに地声で発声します。すると声の響きが口の奥でしっかり共鳴して、一気に声に芯が出てくるようになります。

図1 軟口蓋と舌根を使って喉を開く

▲口の奥のスペースに腹式呼吸で息を吸い込む

▲リップロールから喉を開いて発声する

音程をつけたトレーニング

リップロールから地声にスムーズに変えることができるようになったら、「低いド→ミ→ソ→高いド」というように上行形の音階をつけて、喉を開いて発声してみましょう。練習のポイントは、高い音も低い音も声に芯のある「喉を開いている状態」で発声できているかどうかです。1音1音、喉の開きをチェックしながらゆっくり練習しましょう。  上行形ができるようになったら、同じように「高いド→ソ→ミ→低いド」という下行形の音でもやってみてください(譜例1)。

譜例1 音程を変えて、「ド、ミ、ソ、ド」の上行形と下行形で練習しよう。ピアノで音を確認しながら行おう

これらがきっちりできるようになれば、高いメロディーで声が細くなりすぎたり、低いメロディーで声が小さくなりすぎたりすることはなくなります。どの音でもしっかりと喉を開いて発声できるようにトレーニングしましょう。

 

STEP2  声の音色をコントロールする

「声」は、同じ音程でもいろいろな音色を発声することができます。皆さんは 1 つの音程でいくつの音色を発声することができるでしょうか。3つ以上の違った発声ができたらスゴイと思います。人間は、普段会話をしている時は無意識のうちにいろいろな音色を組み合わせて喋っているのですが、歌う時に発声をいろいろな音色で使い分けることは意外と難しいものです。いわゆる「歌がうまい人」は 、1 曲をいろいろな声の音色を使って表現することができるため、聴き手を飽きさせません。反対に 1 曲の中ですべて同じ声の音色で歌ってしまうと、すぐ飽きられてしまいます。

しかし、練習によって「太い音」「中音」「細い音」といった音色の違い、空気の量が多い「ウィスパー・ボイス」や、しゃがれたような「ダミ声」などを出すことができるようになります。そして、それらを組み合わせることで、歌に様々な表現力を持たせることができるようになります。例えば、悲しい歌は悲しい気持ちと悲しげな表情ではなく、「悲しい音色」で歌うことで、初めて悲しさが表現されるのです。ボーカリストは「声の音色」を最大限に磨き、向上させることが不可欠です。

声の「太さ」を変える

まず、「太い音」「中音」「細い音」と、音色の違いを発声するトレーニングです。同じ音程と音量で、声の「太さ」だけを変えていきます。自分の発声しやすい音程で構いません。オペラのバリトン歌手のようなイメージで、腹圧を上げて舌根や軟口蓋あたりに空間を作ると「太い音」を発声できます。「中音」は、舌根を下げたまま、腹圧は下げずに太い声よりも軟口蓋の空間を狭めるだけで発声できます。「細い音」は、腹圧は下げず、あえて軟口蓋の空間は狭めたまま、舌根を少し上げれば発声することできます。

口の中のことなので、楽器演奏のように「見よう見まね」しにくいのが難点ですが、これらを意識的にコントロールできるように1つずつゆっくり練習してください。

▲太い声を出す時はオペラ歌手のイメージ

声の「性格」を変える

次に、声自体の「性格」を変えてみましょう。ここでは「中音」で発声して、そのまま同じ音程の「ウィスパー・ボイス」と「ダミ声」を発声してみましょう。

ウィスパー・ボイスは「空気がたくさん鳴っている」音なので、ささやき声、もしくはささやきに近い息漏れ声のようなイメージで発声します。しかし、ウィスパー・ボイスは「小さな声」だと誤解しないでください。しっかりと腹式呼吸をすることがポイントです。

ダミ声は、声帯で発された声を喉をあえて閉めて歪ませた声です。「あ」で例えると「あ”」のイメージです。普通の「あ」よりもダミ声の方が呼吸の強さが必要なので、吸う時には普通の発声より多く息を吸いましょう。

「太い音」「中音」「細い音」「ウィスパー・ボイス」「ダミ声」…など、様々な声の音色を組み合わせて、表現力のある声で歌えるようにしていきましょう。

▲ウィスパー・ボイスは息漏れ声のようなイメージ

▲ダミ声は声が歪んだようなイメージ

日本人と外国人は発声が違う!?

「日本人」は、普段喋る時に母国語として日本語を話します。留学生の人もいると思いますが、普段の会話は日本語が多いと思います。実は、世界の言語の中で日本語以外の言葉は喉を開いて喋ることがほとんどなのです。従って、私たち日本人は外国人に比べて「喉を開いて歌う」ということにあまり慣れていないのです。外国人は喉が開いている状態で普段から話しているので、歌う時も声の響きが大きくなって自然と大きく発声できるのです。

また、日本人は喉を開くために必要な「口角を上げる」といった表情も、喋っている時と歌う時にあまり差がなかったりします。つまり、日本人は普段喉を閉じて会話しているので、喉を開かないといけないポピュラー・ミュージックの歌唱スタイルでは、これらを克服するトレーニングが必要なのです。がんばれニッポン!

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