第1回 「トライアド」を使った練習

キーボードはギターと同じように「コードの響き」を担っているパートです。もちろん、決まったフレーズを弾くこともありますが、主な演奏はコードでのバッキングです。そのため、キーボーディストはコード・ネームを見て構成音がわかり、演奏できる能力が求められます。これは経験者にも初心者にも大事なステップです。(文・竹中敬一)

STEP1   トライアドとその転回形

異なるいくつかの音を同時に鳴らすことを「和音」と言います。そして、それぞれの和音に対して固有の名前をつけたものが「コード・ネーム」です。ポピュラー・ミュージックは、コードを中心に音楽が作られています。まずは、最も基礎的な和音である「トライアド」をスムーズに弾けるようにしましょう。

トライアド

トライアドは、法則に従って重ねられた3つの音からできている和音で、メジャー・スケールやマイナー・スケールのルート(第1音)、第3音、第5音で作られています。トライアドにはメジャーとマイナーの2種類があり、メジャー・トライアドと比べるとマイナー・トライアドは第3音だけが♭(半音下がっている)しています(譜例1)。

譜例1 Cメジャー・トライアド(左)とCマイナー・トライアド(右)

転回形を使った練習

まずは、メジャー・トライアドとマイナー・トライアドの基本形と、それぞれの音の積む順番を替えた「転回形」をスムーズに押さえられるようにしましょう。基本形は、低い音からルート→第3音→第5音と積まれています。この音の積む順番を替えるということは、第3音→第5音→1オクターブ上のルートといった積み方などになるということです(譜例2)。

譜例2 Cメジャー・トライアドの基本形と転回形

Cメジャー・トライアドの基本形から、4つの転回形へと指の形を移動させる練習から始めます。基本形→1→2→3→4→3→2→1→基本形と順番に弾いていきますが、メトロノームを使ってゆっくりなテンポで、どの形も同じ拍数だけ伸ばします。転回形に慣れることが目的なので、超絶なスピードは必要としません。しっかりと構成音を把握しながら弾きましょう。

次に、Cマイナー・トライアドの基本形と転回形で行います(譜例3)。Eの音が半音下がってE♭になっているので注意してください。黒鍵を使う場合は、手を奥へ入れて白鍵を弾くようにすると弾きやすくなりますが、移動がスムーズに行いづらくなるので繰り返し練習しましょう。

譜例3 Cマイナー・トライアドの基本形と転回形

コツは、毎回すべての音の場所を確認しないことです。3つの音のうち2つは同じ場所を弾くわけですから、新しく登場する音だけに集中するように心がけましょう。

今回はCメジャーとCマイナーを例にしましたが、他のトライアドでも弾いてみてください。黒鍵の位置によって、押さえる手の形や押さえる指を変えたりと、自分で工夫・研究すべき点が発見できると思います。

 

STEP2   トライアドでリズム練習

バラードやリズミカルな曲のバッキングなどで、「コードを崩して」弾くことがあります。一度にすべての音を鳴らすのではなく、必要な音だけに抑揚をつけて演奏する弾き方です。簡単なように思えますが、実はおろそかにしてはいけない弾き方なので、トライアドの基本形と転回形の押さえ方を基本として、まずはリズム・トレーニングを兼ねたメニューでマスターしていきましょう。

コードにリズムをつけて弾く

まず、右手をCメジャー・トライアドの基本形で準備します。そしてG(ソ)とE(ミ)、C(ド)を交互に刻んで8分音符のリズムを出します(譜例4)。メトロノームを使って、最初は♩=80くらいのゆっくりなテンポで確実に行いましょう。右手でリズムが刻めるようになったら左手を加えます。最初はぎこちないかもしれませんが、タイミングさえ体で覚えてしまえば決して難しくないと思います。

譜例4 はじめは右手だけ、その後に両手でやってみよう

次に、STEP1を参照していろいろな転回形やCマイナー・トライアドでも行ってみましょう。しかし、例えばCマイナー・トライアドでは、転回してトップ・ノートがCになる時に黒鍵を親指で弾くことになり、少し難しくなるので特に注意してください。手首をかるく内側に入れるようにして弾くと押さえやすくなると思います(写真2)。

写真2 弾く場所によって手の位置を変えよう

リズムを変えて練習

応用編として「ハネる」リズムでも弾いてみましょう。ハネるとは、8分音符を3連符としてとらえて演奏することで、「シャッフル・リズム」とも言います。簡単にいうと「タカタカタカ…」というリズムを「タッカタッカタッカ…」と、ハネた感じに演奏するということです。シャッフルの場合、音符同士の間隔が均等ではなくなるので、テンポが乱れないように注意してください。練習方法は、同じようにまず右手だけ、次に左手を加え、慣れてきたら転回形やマイナー・トライアドで行う…という順に進めていきましょう。

最後に、転回形を続けて弾くパターンとの複合練習です(譜例5)。リズムのパターンはこれまでと同じですが、右手が基本形から転回形へ変えながらトライアドを押さえていきます。余裕がなければ、1小節(4拍)単位にしても構いません。無理をせず、押さえる音の場所をしっかりと確認しながら弾きましょう。

譜例5 まずは譜面通りに練習して、応用でシャッフルでもやってみよう

 

トライアドのその先の音はベートーヴェンの時代から

ポピュラー・ミュージックでは、トライアドを超えて、4つ目(7th)、5つ目(9th)、6つ目(11th)、7つ目(13th)の音をプラスして鳴らすことで、より豊かな響きを求める工夫がなされています。コード・ネームの横に小さな数字が書かれてあるのを見たことがあると思います。

しかし、実はベートーヴェンの時代から、例えば9thの音などはよく使われていました。当時は密集した音の積みでサウンドが濁ってしまうのを避けるため、9thの音はルート音から距離を置いて鳴らすことなどが和声学で厳格に定められていました。現在では、そのぶつかり具合を趣ある響きとして捉えることができますが、音に対する変化は数百年のハード/ソフト両面の変化や、使う楽器の変化による影響もあるでしょう。

▲クラシック界の異端児、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

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