第1回 ボーカルは「腹式呼吸」が基本!

歌う時も声を出すために呼吸しています。ただガムシャラに歌って呼吸がコントロールできていない状態だと、思うように歌えなかったり声が枯れてしまいます。逆に、呼吸をしっかりとコントロールできるようになれば、ボーカル・スキルはドンドン上達します。そのための基本中の基本が「腹式呼吸」です。(文・伊丹谷良介)

STEP1  腹式呼吸のトレーニング

普段、私たちは「胸式呼吸」で生活しています。しかし、歌う時には安定した発声をするために「腹式呼吸」を行う必要があります。胸式呼吸は、息を吸った時にお腹が凹んで吐いた時にお腹が膨らみ、肩が上下しますが、腹式呼吸はその反対で、吸った時にお腹が膨らんで吐いた時にお腹が凹み、肩は動きません。腹式呼吸は胸式呼吸よりも肺へ送る空気の量が圧倒的に変わり、声帯がしっかり響いてボリュームと芯のある発声を生みます。

初心者の頃は、意識していてもつい日常会話でしている胸式呼吸ぎみに歌ってしまい、腹圧が足りずに声がナヨナヨとしてしまうことが多くなります。しかし、地道な練習を重ねることによって必ずできるようになるので、頑張って続けていきましょう。

お腹の凹凸を意識する

腹式呼吸のトレーニングは、しっかりとお腹の凹凸を確認しながら呼吸することから始まります。まず、お腹を押さえてゆっくりと息を吸ってください。その時、肩を動かさず、空気が「胸部」ではなく「腹部」に入っていくような、吸った息でお腹を膨らませるつもりでゆっくり吸います。息を吐く時には、吸う時と同じく肩は動かさないようにして、お腹に入った空気を口から押し出すイメージでゆっくり吐きます(写真1)。これが腹式呼吸です。時間を決めて毎日集中してやってみましょう。

写真1 吸った時にお腹が膨らみ(左)、吐いた時にお腹が凹むように呼吸してみよう

リズムに合わせる

腹式呼吸がスムーズにできるようになったら、メトロノームや適当な楽曲に合わせて行います。♩=100から120 くらいのテンポで、2小節ずつから半拍ずつまで、長さを変えて腹式呼吸をしてみましょう(譜例1)。 楽器パートの人が基礎練習をするように、しっかりとリズムに合わせて呼吸することを心がけましょう。呼吸がリズムに合うようになると、楽器を演奏しているような感覚になり地味な基礎練習も楽しくなってくると思います。

「歌う」という行為は、小さな頃から自然に行ってきていると思いますが、ボーカリストとして体を楽器のようにしっかりと鳴らすためには、「歌うための呼吸法」を覚える必要があります。そして、その呼吸をリズムに合わせてできるようになることが目標です。「腹式呼吸」をマスターしていくことが、ボーカリストとしての第一歩となります。

譜例1 メトロノームに合わせてリズムの中で腹式呼吸の練習をしてみよう

 

STEP2   腹式呼吸を使ったリップロール

腹式呼吸をしながら唇を「ブルルル…」と震わせて発声することを「リップロール」と言います。リップロールをマスターして発声できるようになれば、呼吸の乱れがなくなり、喉が開いて格段に歌いやすくなります。また、声に芯が出て、低音や高音がブレにくくなったりするなど、様々なスキル・アップにつながります。

リップロールのトレーニング

まず、肩の力を抜いて腹式呼吸を行います。そして、息を吐く時に歯を噛み合わせて口を完全に閉じた状態で、唇を震わせて「プルルルルー」と発声します。息を吸った時に、胸式呼吸にならないように気をつけましょう。最初は声帯を鳴らさずに息だけでやってみると、やりやすいかもしれません。

次に、自分の出しやすい声で構わないので、「ブ、 ブッ、ブゥー」と発声します。息と発声が乱れる場合は、腹式呼吸が上手にできていない状態です。5秒から10 秒以上「プルルルルー」と自然に継続できれば、腹式呼吸で声帯が安定した筋肉の状態で鳴っているという証拠です。唇を震わせる感覚がわからなくて、少し難しいなと感じる人は、はじめのうちは口の周りを指で軽く押さえてやってみるとコツがつかめると思います(写真2)。

目標は、リップロールで発声した時の体の筋肉の動きが習慣づけられて自然にできるようになることです。日常生活の中で支障がない程度に、常に意識してこのリップロール・トレーニングを続けましょう。例えば、道を歩いている時やテレビを見ている時など、暇さえあれば行って、体に筋肉の動きを染み込ませていくことが大切です。

写真2 はじめは口の周りを指で押さえながらやってみよう

リズムに合わせる

自然に無理なくリップロールができるようになったら、腹式呼吸のトレーニングと同じようにリズムの中で行いましょう(譜例2)。メトロノームや適当な楽曲に合わせて、♩=100から120 くらいのテンポで2小節ずつから半拍ずつまで、長さを変えてリップロールを行います。何となくではなく、しっかりとリズムに合わせて行ってください。

リップロールは歌う前の喉のウォーミング・アップとしても非常に効果があります。個人練習やバンド練習の前、そしてライブ本番の前には、実際に歌う曲のリズムに合わせて行うと良いでしょう。その時は、腹式呼吸と共に行うことを忘れずに!

譜例2 メトロノームに合わせてリズムの中でリップロールの練習をしてみよう

腹式呼吸を制するものは、歌を制する

電気やマイクロフォン、音響技術がなかった頃、何千人も収容できるコンサート・ホールで歌う歌手は、マイクを使わずにその広い会場で声を響かせて歌っていました。クラシックやオペラ歌手には、正しい腹式呼吸で歌うことが必須ですが、バンド演奏の大爆音の中で歌うロック・シンガーにも同じ呼吸法が求められます。腹式呼吸は、すべてのシンガーにとって必要な呼吸法なのです。

歌う時には、「声の音色をコントロールするAエリア」「音程をコントロールするBエリア」「呼吸をコントロールするCエリア」を上手に使いこなしていかなくてはなりませんが、Cエリアの腹圧が強い呼吸法をマスターすると、音程も音色も表現力もアップします。腹式呼吸をしっかりとマスターして、どんなジャンルでも歌えるようになろう!

▲音色はA、音程はB、呼吸はCでコントロール

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