現在、多くの大会において審査の基準が異なります。順位がつけにくい音楽というカテゴリーでは、その時々の審査員の主観で優劣が決められ、会によって審査されるポイントが変わっています。今後、全国的な部活動として軽音楽部が発展していくため、同じ目標を生徒たちに提示するために、審査基準の統一は早急に取り組むべき課題です。教育という観点を主眼においた審査基準を発案いたします。議論のきっかけになれば幸いです。

特定非営利活動法人 全国学校軽音楽部協会
副理事長 辻 伸介

 

軽音楽部の大会における統一審査基準案

1.審査の方向と基本的な考え方について

  • 軽音楽部の大会は部活動の延長線上にあるため、部活動として「本番までにメンバー全員で何を
    積み上げてきたのか」「全員で良いステージを作れたか」を主な審査の対象とする。
  • 個々のテクニックや才能よりもアンサンブルを重視し、全員で同じ目標に向かっていたかという
    「チームワーク」や「チームプレー」を審査する。
  • 将来性、個別のアクシデントや諸事情などは考慮せず、当日のステージの完成度のみで審査する。
    個人の楽器トラブルなども場合によっては審査の対象とする。
  • 軽音楽部はバンド演奏を通じて「コミュニケーション」を学ぶ場でもあるので、バンド形態での
    出場を原則とする。

2.楽曲のカテゴリーについて

  • 演奏する楽曲がオリジナル楽曲なのかコピー楽曲なのかは問わない。ただし、「クリエイティビ
    ティー」が特徴である軽音楽部の大会においては、オリジナル楽曲である方が望ましい。
  • コピー楽曲の場合、審査員がその楽曲を概知かどうかで評価が変わる可能性があるため、原曲と
    の違いで評価しない。
  • カバー楽曲の場合、あくまでも「アレンジ」と捉えてオリジナル楽曲とは認めない。ただし、ア
    レンジに対するオリジナリティーやクリエイティビティーは審査の対象とする。
  • オリジナル楽曲の場合、審査員の好みによって評価が変わる可能性があるため、楽曲の良し悪し
    で評価しない。※ケースによっては、楽曲の音楽性や良し悪しを通常審査とは別枠で「楽曲賞」
    を設けることで評価することもある。

3.審査項目について

・合奏力
その楽曲を「演奏」するために必要なことをメンバー全員でどれだけ突き詰めて練習してきた
か。また、披露できていたかを審査する。単純に個々の技術を評価するわけではない。

①テクニック
メンバー全員がその楽曲を演奏するための技術をどれだけ習得していたか。

  • 個人のハイレベルなテクニックは合奏にそぐわなければ評価しない。ただし、何もしないこと
    が良いわけではない。
  • コピー楽曲の場合、原曲に忠実かどうかよりも「良い合奏」を目指せていたかを評価する。
  • オリジナル楽曲の場合、個々のフレーズのアイデアやセンス、オリジナリティーなどはここで
    は評価しない。そのフレーズを表現するための演奏技術のみで評価する。

※部活動は単に技術の向上が目的ではなく、「技術は合奏のため」という意識を育てる。
※選曲やレベルに合ったアレンジなどをメンバーで協力して考える意識を育てる。

②リズム理解
メンバー全員がその楽曲を演奏するためのリズム(テンポ、グルーヴなどを含む)をどれだけ理
解していたか。また共有、及び披露できていたか。

  • 全員がリズムの共有をしていたかを評価する。
  • 楽曲に合ったテンポで演奏し、全員でテンポキープができていたかを評価する。
  • 原曲に忠実かどうかよりも「良い合奏」を目指せていたかを評価する。

※各々がテンポキープ、リズムキープをする意識を育てる。
※音楽にはリズムが伴っていなければならないという意識を育てる。
※ポピュラー・ミュージックにとって大事な「グルーヴ」への意識を育てる。

③セオリー
メンバー全員がその楽曲を演奏するための音楽的知識をどれだけ習得していたか。また共有、及
び演奏できていたか。

  • 個々のフレージングにおいて、キー、構成、和音、コード進行などが理解できていたか。
  • コピー楽曲の場合、原曲に忠実かどうかよりもハーモニーとして成立していたかどうかを評価
    する。原曲が音楽的におかしい場合であっても考慮しない。
  • オリジナル楽曲の場合、コードアレンジのアイデアやセンス、個々のフレージングなどのオリ
    ジナリティーはここでは評価しない。メンバー全員の和音への理解を評価する。

※各パートのフレーズが絡み合って音楽ができているという意識を育てる。
※キー、スケール、コード、コード進行などの必要最低限な音楽的知識の必要性を育てる。

・表現力
その楽曲を「表現」するために必要なことを、メンバー全員でどれだけ突き詰めて練習してきた
か。また、披露できていたかを審査する。

①イメージ共有
メンバー全員がその楽曲の歌詞や世界観、感情、ダイナミクスをどれだけ理解し、また共有し
て、どれだけ独自性を出しながら演奏できていたか。また表情やステージングなどで演出し、表
現できていたか。

  • 例え、音楽理論上は奇抜なフレーズであっても、楽曲の表現として成り立っていれば評価する。
  • 個性に関するオリジナリティーはオリジナル楽曲の場合もコピー楽曲の場合も、歌唱や演奏が
    音楽的かどうかを重視し、評価する。
  • 派手に動きまわることや動かないステージングなどは楽曲にそぐわなければ評価しない。楽曲
    のイメージに合ったステージングやパフォーマンスができていたかを評価する。
  • 客席に音楽や楽曲に含まれるメッセージなどを伝えようとしていたかを評価する。
  • きちんと演出されていたかどうかではなく、メンバー全員が1つになってドラマを作ろうとし
    ていたかを評価する。

※自己満足で終わらず、全員で人に何かを伝える演奏を目指す意識を育てる。
※人前で演奏するということは楽曲を聴いてもらうためだけではなく、ステージを見てもらうこ
とでもあるという意識を育てる。

②バランス
ステージ上でメンバー同士が連携を取りながら演奏できていたか。各パートの音量や音色、音の
定位、音域などのバランスが取れていたか。

  • 演奏中、お互いを意識して「合わせよう」としていたか。アイコンタクト、ミスやトラブルの
    フォローなども評価の対象とする。
  • テーマメロディーやソロなどの音量や音色は適切で、押し引きができていたか。
  • それぞれがその楽曲の合奏に合う音作りができていて、歌を含むすべてのパートがきちんと聴
    こえていたか。
  • チューニングが合っていたか。

※自分が全体の中の1人であり、アンサンブルの中でどう演奏すれば良いかという意識を育て
る。
※音楽は「音」として全員で奏でるものであるという意識を育てる。
※楽器を「楽器」として扱い、本番に向けたメンテナンスや調整の必要性を理解させる。


4.審査方法と賞について(例)

  • 審査員3名(1名は審査員長)が上記の考え方に基づき、総合的な審査を点数によって行い賞を
    決定する。同点だった場合は審査員、及びコメンテーターによって協議され、最終的に審査員長
    が判断する。
  • 審査員は各バンド演奏終了後に講評し、アドバイスシートに全体的なアドバイスを記入する。
    コメンテーターは審査には関わらず、パートごとのアドバイスをシートに記入する。
  • 審査の点数は開示し、アドバイスシートは各校へ渡すことによって今後への意欲につなげる。
  • 出場するバンド数が多く、演奏楽曲にオリジナル楽曲とコピー楽曲が混在する場合の部門分けや
    オリジナル楽曲の優秀性を審査しての「楽曲賞」の授与、各パートごとの「個人賞」の授与など、
    ケースによってのアレンジは可能とする。

①各賞の例
グランプリ          1バンド
準グランプリ         1バンド
第3位            1バンド
奨励賞            3バンド
楽曲賞(オリジナル楽曲のみ) 1バンド
個人賞            各1名
ベスト・ボーカリスト
ベスト・ギタリスト
ベスト・ベーシスト
ベスト・ドラマー
ベスト・キーボーディスト
ベスト・プレーヤー(上記以外の楽器演奏などで優秀な生徒がいた場合)

②楽曲賞
オリジナル楽曲において、歌詞、メロディー、コード進行、バンドアレンジ、パートアレンジ
などを含め、総合的に優れていたグループに贈られる賞。
・作者個人ではなく、グループに贈るものとする。
・個人、及びバンドの演奏力や表現力は審査の対象に含まない。

③個人賞
個人のテクニックや音楽的センスが優れていた生徒へ贈る賞。
・アンサンブルを無視した身勝手な演奏などは対象外とする。
・オリジナル楽曲やカバー楽曲の場合、個性やオリジナリティーも評価の対象とする。ただし、
音楽的でない場合は評価の対象としない。

④その他、演奏中止、審査対象外、失格になる場合もある。
・危険行為を行った場合。
・あきらかに演者の行動が起因となる遅延があった場合。
・誹謗中傷や暴言など、部活動にそぐわないMCや発言があった場合。
・その他、大会規定のルールを守らなかった場合。