音楽合宿

全国の軽音楽部の中には、夏休みや春休みを利用して「合宿」を行っているところが少なくないことをご存知ですか。「野球部やサッカー部などの運動部ではよく聞く話だけれど、軽音楽部で合宿なんてできるの?」と思っている方も多いことでしょう。音楽に没頭できる環境と設備の整ったスタジオ、発表会ができるホール…。軽音楽部の仲間と過ごす音楽漬けの数日間は全体のレベルアップにつながり、自身の成長や高校時代の良い思い出になります。

各地に高等学校文化連盟軽音楽専門部や高等学校軽音楽連盟が発足し、公式なコンテストが行われるようになった高校軽音楽部は毎年、夏休みに「全国高等学校軽音楽コンテスト」と銘打った大会が開催されるほどになりました。そんな中、常に勝ち上がってくる学校は事前に「夏の強化合宿」を行っていることが多いと聞いたら、驚く人もいると思います。

では、合宿にはどんなメリットがあるのでしょうか。下記に挙げたのは、合宿の主なメリットです。そこから得られるものは「個人のスキル」 「バンドの一体感」「楽器や機材などの知識」「部員同士のより良い関係性」など、様々です。普段とは違った環境にいることで、自分自身の音楽や楽器への関わり方、バンドのレベルアップや部活動全体のステップアップにつながります。

合宿を行うメリット

①設備の整ったスタジオが使える
②練習時間を長く取れる
③音楽に没頭できる
④合宿ならではのメニューができる
⑤全員の状況が一気に把握できる
⑥部員同士の絆が強まる
⑦高校生活の良い思い出となる

練習時間が普段の20倍

普段ではありえない、24時間音楽漬けの生活

学校によって違いはあると思いますが、普段の部活動で1バンドに与えられる練習時間は30分くらいが平均のようです。短い時間だからこそ、前もって準備をしたり、集中して練習ができていることと思いますが、そこで出た問題点や修正点は次回に持ち越されてしまうことが多いのではないでしょうか。もちろん後でゆっくりと冷静に考えることも大切ですが、その日のうちに解決した方が良いことも多いはずです。

合宿所となるホテルやロッジには、メンテナンスの行き届いた機材が一通り揃ったスタジオが複数部屋、用意されています。多くの場合が24時間利用可能で、宿のルールや別団体の有無などにもよりますが、基本的には自由にスタジオを使うことができます。当然、それぞれのバンドに与えられる練習時間も格段に多くなるでしょう。スタジオに入って音を出せる時間が多いこと、それが合宿の最大のメリットです。

睡眠や食事、入浴、ミーティングなどの時間を除いても、1日のうちにスタジオに入れる時間は10時間ほどが捻出できます。普段の練習時間が30分だとすると、ざっと20倍(!)です。細かいアレンジのチェックや様々なシミュレーション、バンドだけでの基礎練習や曲作り、アンプや楽器の音作りなどをじっくりと行うことができます。大会などの前に合宿を実施する学校が多いのもうなずけます。

合宿ならではのメニューを取り入れる

時間的に余裕があり、音楽に没頭できる合宿では、普段の練習よりも時間をかけたメニューや課題を行うことができます。普段のルーティン練習を長めに行っても、合宿時にしかできない特別メニューを行っても良いでしょう。また、多くの場合、宿泊する宿にはライブができるホールが併設されているので、最終日に発表会を行ったり、ホールで基礎トレーニング・メニューを全員で行うこともできます。

中には、割り切って「合宿の時だけのバンド」を編成する学校もあるようです。全員がフラットな状況で合宿期間中に楽曲をまとめ上げなければならないので、即戦力と集中力が鍛えられます。その場合、好きな者同士で組むのではなく、必ず先輩と後輩が組むようにすると、部員同士の関係性も向上します。

「合宿中にイチから楽曲を作らなければならない」という課題も面白いでしょう。曲作りに慣れていなくても、普段と違う環境ならできるかもしれません。特に都会から来た学校の場合、食後に散歩でもしながら、大自然の綺麗な空気を思いっきり吸っていたら、頭がスッキリして素晴らしい曲ができるためのアイデアが溢れ出てくるかもしれません。

団体行動から生まれるチームワーク

部活動で最も大切なのは部員同士の関係です。軽音楽部は「バンド単位」での活動がメインになりがちなので、部活動としての統率が取りにくい場合が多くなります。しかし、それは普段の活動の中では先輩・後輩の関係や同級生同士の関係を深めることがなかなか難しいから、とも言えます。合宿では数日間、たくさんの部員が寝食を共にします。よく言う「同じ釜の飯を食う」ことで、チームの結束力は格段に高まります。それは、ただ単に皆で食事をすることが大事なのではなく、配膳や席順、お茶の配布、片づけなどを共同で行うことや周りに気を配ることによって、チームワークを生むためです。また、相部屋で過ごすことも同じです。自分勝手な行動は慎み、周りの状況をよく把握し、「今、自分は何をするべきなのか?」を考えるといった感覚は部活動やバンドというチームの中での責任感とコミュニケーション力を育てます。

個々のつながりが深まる

おいしい食事に会話も弾む

合宿では先輩・後輩や同級生との個人的なつながりも深まります。「普段の練習では厳しい先輩が話してみたら、意外と優しかった」「いつもチンタラとしている下級生が、実はとても行動力があった」「顧問の先生がすごく音楽に詳しかった」などというのはよくあること。いつもより長い練習時間、食後の休憩時間、部屋やロビーでの会話など、合宿は普段以上にコミュニケーションが取りやすく、それぞれの知らなかった一面が見えたりします。部員同士の絆が深まって、休憩時間や自由時間中、音楽談義に花が咲くことでしょう。

部員同士の距離が縮まれば、先輩に質問をしたり、個人的な指導を受けたりするきっかけにもなります。「空いているスタジオで、音を出して説明しよう」「じゃあ、晩ご飯が終わったら、ギターを持って部屋に行くね」など、普段ではできないコミュニケーションが生まれ、悩みを抱えていた同級生や後輩が相談するきっかけ作りにもなります。それぞれの部員がより密接な関係を築くことができ、自発的に動き出せるようになる環境があるのも合宿の魅力の1つです。