第85回 明星高等学校 軽音楽部

第85回目となるデジレコ・バンド・クリニックの実施校は明星高等学校です。京王線の府中駅、またはJR中央線の国分寺駅からバスで数分のところに位置する同校の歴史はとても古く、設立は1923年(大正12年)。当時は男子校として設立されたとのことです。また、教育目標として「自律心を持った自立した人の育成」を掲げています。早速、軽音楽部の様子を顧問の阪上龍也先生に伺いました。

ー 軽音楽部の歴史を教えてください
阪上:私が当時、受け持っていたクラスの生徒が頼んできたのがキッカケです。その生徒はメディアから取材が来るほどにドラムが上手な生徒でした。当時は中庭でブラス・バンドがコンサートを開いており、「器楽部」という名称で木琴などを使ってロックを演奏していたんです。その器楽部で「ドラムやギターを使って、ビートルズを演奏したい」ということで始めたのが今から30年前になります。その生徒は校長先生が感動するくらいにドラムが上手で、現在はプロ・ドラマーとして活動しています。職員会議で許可を得るのは大変でしたが、その生徒が熱心に私に話してくれたので、創ることができた部活動です。当時の部費は年間で3,000円だったので、譜面を買って終わりでしたが、放送部のチューリップ型のスピーカーを借りてきたり、音楽室の倉庫でエレクトリック・アコースティック・ギターを見つけて、演奏したりしていたのが当時の様子です。

ー 現在の軽音楽部の校内での評判はいかがですか
阪上:2006年にヤマハのイベントで全国大会に進むことができ、高校3年生の2人が奨励賞を獲得したので、当時は学校に看板が出たほか、理事長や役員の方々にCDを渡したりしました。その10数年前の出来事がピークで、また全国レベルの水準に部活動全体を持っていかないと…と考え、今は頑張っているところです。どうしても運動部やブラス・バンドと比べられてしまうところがあり、トランペットの音は良いのですが、エレキ・ギターを教室で弾くのは禁止です。そのような部活動間の格差があることを部員たちも感じているので、校内での軽音楽部のイメージを向上させようと考えています。

ー3年生の引退時期はいつですか
阪上:6月に行う引退ライブで引退する部員もいますが、その後に夏の大会が控えているので、夏まで活動している部員が大半です。決勝大会まで勝ち進むか、予選大会で落選してしまうかは別として、8月の大会が終わると3年生は引退となります。

ー 新入部員の募集方法を教えてください
阪上:楽器の持ち方や演奏の仕方など、何もわからない状態の部員も6月初旬に行うオーディション・ライブで「ビートルズの楽曲から1曲をコピーして、最後まで演奏する」というのが軽音楽部の伝統になっています。創部当時から「ビートルズを演奏できれば、いずれはオリジナル曲を作れる」ということで続いており、最後まで演奏ができれば、正式に部員として認めています。楽器は個人で購入しており、2019年度からは「パートリーダー」を決めて、上級生が楽器の購入時のアドバイスから演奏方法までを指導するようにしたいと考えています。なお、オーディション・ライブで不合格になってしまっても、どうしても軽音楽部に入部したい生徒は、もう一度だけ挑戦させています。

ー バンドのメンバーはどのように決めていますか
阪上:部員たちの意志に任せています。最初にビートルズの曲を演奏する際にコピーバンドを組むのですが、オーディション・ライブを経て、正式に軽音楽部員になると、そこでメンバーの組み換えが起きたり、1年生の最後に新しいバンドができたりします。顧問がメンバーを決めるようなことはしていません。4人のメンバーが3人になったり、オリジナル曲の創作意欲が強かったり、どうしても演奏したいコピー曲があるなど、バンドによって様々ですが、いずれの場合も必ず顧問に報告させるようにしています。以前、いろいろな事情があり、バンドを組ませてあげられなかった部員がいたのですが、その子はずっと音響を担当していました。卒業時にその部員が私にお礼を言ってくれて、とても感動したのを覚えています。

ー 全体練習はしていますか
阪上:私が運動部の顧問を兼ねていることもありますが、バンドごとに「集合と解散」を必ず報告するようにさせています。現状は広いスペースがないので、全体練習に取り組むことは難しいのですが、今日のクリニックで使用した視聴覚室が平日も借りられる場合は、ぜひ全体練習を導入したいと他の顧問と検討しているところです。

ー 貴校らしいユニークな練習方法はありますか
阪上:これと言って、ありません。自主的に苦労しながら、学ばせているのが現状です。基礎練習は自分で取り組まないと何を言われてもわからないと思うので、ある程度までできるようになった段階で、次の基礎練習を教えるようにしています。入部したての頃は頭の中がいっぱいで、どんどん知識やスキルを習得したいという「野生感」が薄いものなのですが、2年生くらいになるとそれが強くなり、基礎技術がグンと伸びる子が多いです。なお、基礎練習に関しては上級生と下級生が仲良くなり、一緒にバンドを組んで活動していく中で教わることもあるようです。掛け持ちは2バンドまで認めているので、1・2年生の混合バンドもいくつかあります。他校の軽音楽部の顧問の先生に「どうやって、そんな風習を作っていったの?」と聞かれることがあるのですが、本校の軽音楽部は先輩と後輩の上下関係がうまくいっていると思います。また、「あの先輩は無口だけど、いろいろと教えてくれる」などと部員同士が情報を共有し合って、「5分だけで良いので、個人レッスンをお願いします!」というようなリクエストを先輩にしているようです。

ー 年間の行事予定を教えてください
阪上:6月にオーディション・ライブを行うほか、3年生の引退ライブをライブハウスを貸し切って、開催しています。それ以外は特に行事はないので、夏の大会に向けてレコーディングを行っています。8月の大会前に合宿を実施するほか、9月の下旬に文化祭があり、12月は国分寺駅前で行われる商店街のイベントでクリスマス・ライブを行います。それ以外は各校の合同ライブに参加させていただいたり、昨年度はチャリティー・コンサートにも参加しました。

ー 近隣校と交流はされていますか
阪上:東京都立神代高等学校さんの合同ライブには、よく呼んでいただいています。これまでは学校の方針があり、あまり外部のイベントやコンテストに参加したり、取材などを受けることはできなかったのですが、校内の体制が変わり、去年くらいから徐々に外へも出ていくようになりました。いずれは本校でも合同ライブを開催したいのですが、現状の部員たちの様子を見ると、まだ少し早いと感じています。でも、ゆくゆくは他校さんをお招きして、合同ライブを行いたいです。

ー 今後はどのような軽音楽部にしたいですか
阪上:私が顧問でなくても、自分たちで活動ができるように部員の自主性を伸ばしつつ、上を目指していけるような軽音楽部にしていきたいです。

ー モットーやスローガンを教えてください
阪上:これから部の目標を整理するところなのですが、いつも部員たちに話しているのは「大会やイベントに出られないバンドや部員もいるけれど、お互いが上手になった!とか、精神面も強くなった!という風に、みんなで成長を喜び合えるような雰囲気を作る」ということです。他校も含め、お互いが仲間であり、ライバルでもあります。自己満足の世界にいてはダメなので、切磋琢磨して、認め合える間柄であって欲しいと考えています。

ー 顧問としての苦労や、やりがいを教えてください
阪上:やりがいを感じるのは卒業したときに、全員でお礼を言いに来てくれる時でしょうか。「最高の高校生活でした!」と言われると部員たちの成長を感じますし、その瞬間だけですべてが報われるような気持ちになります。昨年度は期待できるバンドが3つあったのですが、いろいろな大会やイベントでグランプリをいただいたのに東京都の公式大会では歯が立たなかったり、逆に予想外のバンドが上へ行けたなど、お互いがそれぞれのバンドを応援しており、とても良い雰囲気の学年でした。常に批評会を行っていたので、「みんなの応援があったから、自分たちが先へ進めた」ということもわかっており、しっかりと感謝の気持ちを持ってくれていました。反対に、人間関係を作るのが苦手な生徒が少なくなく、すぐにバンドが解散したり、嫌なことがあると顧問のところに相談へ来るのですが、顧問が介入しても修復せず、退部してしまうのが一番悲しいですね。打たれ弱いのか、すごく仲良くやっていたバンドが、実はすごく仲が悪かったり、温度差があるなど、バンドとして成立していないところもあります。

ー 誌面を通して、部員に一言お願いします
阪上:楽器の演奏を通して、感情を表現する力や相手に伝える力を磨いて欲しいと思います。また、流行の音楽を聴けば、すぐにわかるし、かっこ良いと感じると思いますが、その奥にある「グルーヴ」や「音楽のルーツ」を探ることにも取り組んでください。ただ単に演奏しているだけでは、それらの要素を取り込むことはできないので、まずは「相手にエネルギーを伝える」という表現力を掴んで欲しいと思います。

ー クリニックを受講しての感想をお願いします
阪上:私が普段、部員たちに伝えている内容を包括してお話ししてくださったので、とても助かりました。軽音楽部員としての「心構え」も話しているのですが、いつもは聞き流してしまうようなところも、今日はとても丁寧に教えていただけました。教員の業務をやりながらなので、普段、なかなか時間が取れないところもあるので、今日は部全体のことから各バンドの具体的な指導まで、本当にありがたかったです。全国各地を飛び回られているので、大変だと思いますが、今日は部員たちの刺激になり、とても良かったです。ありがとうございました。

関連記事

  1. 第86回 東京都立狛江高等学校 軽音楽部